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第13話

 三十を前に童貞は捨てていた。 「入れる方もやる?」 「はい……!」  嬉しそうに頷く、地味でキラキラした若い顔が微笑ましかった。  キスはしないといえば残念そうな顔をされ、止まらなくなったフグタに三回乗られてギブアップした。  以来、懐かれた。 「ダイヤさん! 今日来るって言ったじゃないですか! 浮気っ」 「これフグタ、付き合ってないから」 「はあ」  今日の福田は二一歳。本名は藤田だった。最近はこの手の初々しいタイプに惹かれる。 「セーフセックス出来るならいいよ。どうする?」 「あ、じゃあその……はい」 「うそぉ!」  フグタの吹聴により、ダイヤの福田検定の範囲は、二十代にまで広がった。  優しい、無理をしない、どっちもやらせてくれる素敵な『ダイヤ』。  調子のいい噂に尾ひれがつき、わざわざ顔を見に来てキモッと舌打ちで帰られることもしばしばだ。さすがに傷つき、第一印象にも気を使うようになった。  姿勢、目線。佇まい。目指す先には、福田がいる。  選ぶ衣服も、年齢や噂に見合ったものに変えた。  それで福田に近づけたかといえば、全然ダメだなと笑いが浮かぶ。  木野の瞼に棲む福田から、輝きが失せたことは一度もない。

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