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第14話
十年が過ぎるのはあっという間で、その先も光の速さで過去となった。
記憶の中の福田とは、じきに歳が並ぶ。
二十年の区切りに意味はなく、福田は今でも木野の中で輝いていた。
出会えただけで、十分に奇跡だと今では思える。
木野も歳をとり、自分の隠れたロマンチストぶりを恥じ入るようなった。最近はもっぱら、相手の話を聞くばかりだ。
「ダイヤさーん! 電話鳴ってるよ!」
「おう」
後ろの席で声を上げたフグタは、隣に恋人がいる今でも木野の世話を焼きたがった。
面白いもんだなと、不惑をとうに過ぎた人生を顧み、木野は分厚い瞼を擦って手にしたスマホで光る『福田』の文字に、中年の唇を震わせた。
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