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第5話【一日目】退院祝い

先週と同じく、朝五時に起床し畑に行くと、すでに祖父が畑仕事をしていた。 「まだ無理はダメだって!!」 急いで作業を変わると、祖父も素直にそれに従った。短い間だったが、はじめての入院生活が余程堪えた様だ。 「あぁ、分かっているさ。」 祖父には気の毒だったが、しばらくの辛抱だ。清々しい朝の空気を思いきり吸い込み、ふと隣の畑に目をやると小林の姿が無い事に気付いた。 「金曜と土曜の夜は、店に出ているからな。起きても昼過ぎだ。」 先週日曜の朝は、実は無理をさせてしまっていたのだと、今更ながら反省した。 「みっちゃんは、普段は男前だが、夜は美人さんだぞー。見舞いにも来てもらったし、今夜、一緒に行くか。」 酒好きの祖父は、家族の反対を押し切り、近所のバーを転々と飲み歩いていた。そのうちの一軒が、小林の働くオカマバーだった。 「じゃぁ母さん、(けい)を宜しくお願いします。こっちは、じいちゃんが飲み過ぎない様に、ちゃんと見張っておくから。」 母親には、退院祝いに小林と呑む事になったと告げ、徒歩で小林宅まで行きタクシーで店に向かった。 「ゆうちゃん、たっくん!いらっしゃぁ〜い♪」 店の扉を開けると、蒸せ返る様な香水の匂いと共に、『ミチル♥』と名札をつけた小林が出迎えてくれた。 祖父の言う通り、小林ことミチルはとても綺麗だった。軽いウェーブヘアーのウィッグに、最低限の化粧、上品なドレス。まるで銀座のホステスだ。 「どう?少しは見直した?」 「そうですね。」 あえて素っ気なく答えた。あまりの美しさにミチルが小林である事を忘れそうだった。高鳴る胸を誤魔化す様に、ウィスキーをストレートで注文した。 「たっくん、いけるクチ?」 「拓也、今日は朝まで呑もうな!!」 不本意だが、祖父とこんな風に酒が飲めるのは小林のお陰だった。嬉しさと恥ずかしさとで、その晩はやたらと酒がすすんだ。 こんな夜がいつまでも続けば良いのに…。 気付くと夢の中。優しい土の匂いと、暖かくて気持ちの良いお日様の光に包まれていた。 なんだか懐かしい気分になった。 寝返りをうち、うっすら目を開ける。すると、隣には最近出会ったばかりの男の寝顔があった。 「えぇっ!!!」 飛び起きると二人とも全裸だった。心臓が早鐘をうち、脳をフル回転させるが、二日酔いの頭では、まったく追い付かない。 その気配に気付いたのか、小林も目を覚まし、満面の笑みが向けられた。 「おはよう。拓也。」

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