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第7話【三日目】BBQ

「今日のお昼はBBQよ!!」 その日は母親の提案で、朝の農作業後に実家の庭先でBBQをする事になった。 昨日迷惑をかけたお詫びに、小林を誘う様に言われ、渋々家を訪れると、ちょうど野菜を抱えた小林が畑から戻って来た。 「あら、拓也!?おはよう。」 「いつの間に、たっくんから拓也になったんですか。」 「ひっどいわぁ〜。俺はたっくんじゃない!拓也だ!!って自分で言ったのよ。私の事だって、みんなの前で道隆道隆って激しかったんだからぁ~」 「もう、結構です!!」 このまま話を聞いていては長くなりそうだったので、すぐに要件を伝え、逃げる様にその場を後にした。 (―――この時、もっと殊勝な態度をとっておけば良かったと後に後悔する事になる。) 昼時になり家族総出でBBQの準備をしていた。遠くから女性の影が見えたので、母親の客かと思い、呼びに行こうとすると聞き覚えのある声が響いた。 「こんにちは~」 「…みっ、ミチルさん!!?」 ミチルの姿で小林がやってきた。息子は、その正体をすぐに見破り、おおはしゃぎで駆け寄った。 「あら、けいちゃん。今日はみっちゃんって呼んでね。」 「うん。みっちゃん、おひめさまみたい!!」 スカートの裾を軽く持ち上げ、お姫様風にお礼をすると、今度は真っ直ぐ母親の方へ向かった。 この前は、正体がバレない様に四苦八苦していたのに、どういう風の吹き回しだろうか。 「いつもお世話になっております。小林です。道隆が用事で来られなくなってしまったので、変わりにご挨拶に参りました。」 ミチルは手に持っていた飲み物と菓子を母親に手渡し、丁寧にお辞儀をした。 「こちらこそ、ご丁寧にありがとうございます。良かったらゆっくりしていって。」 母親は、ミチルがあの小林である事にまったく気付いていない。 「ところで、どういったご関係なのかしら?」 当然の疑問だろうが、小林とミチルの関係を問われている。ヒヤヒヤしながら事の成り行きを見守っていた。 「私ったら自己紹介がまだでしたね。ミチルです。宜しくお願いします。」 こともあろうに店の名刺を差し出した。 「オカマバーのホステスさん!?」 「今日は道隆では無く、ミチルで来ました。お宅の息子さんと、夫婦になりたいと思っています。」 上品な笑顔でニコリと微笑んだ。 祖父は親指をグッと立て、よくやったと言わんばかりの笑みを浮かべている。 しかし、誰一人二の句が継げずにいた。 不気味な静けさに、嵐の予感がした。

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