11 / 64

第11話

「あんた、綺麗だ」  囁いた彼も一糸纏わぬ姿で私に馬乗りになり、再び指先だけで私の身体を辿り始め、至るところに触れて私の反応を探った。極弱い刺激がもどかしく、もっともっととはしたなく強請ってしまいそうになるのを必死に堪えて、今は彼のいいように、私を余すところなく探って、すべてを知って欲しいと無抵抗を決めた。  優しい指先がくすぐったくて、しかし彼の邪魔をしてしまわないよう細心の注意をはらいつつ小さく身を捩った。それに気付いた彼は指の動きを止め、私にぴたりと被さると肩口に顔を埋めた。彼が唇をつけるたび、舌を這わすたびに響く艶めかしい潤滑音を聞きながら、いよいよ本格化し始めた行為のこれからを夢想し腹の底が熱くなった。ゆるく開いた口からは甘い息が漏れて、汗ばみ始めた彼の背に手を這わせると胸がきつく締めつけられた。 「ん、あ………っ」  彼の唇が胸の頂きに触れ、堪えきれなかった吐息と共に上擦った声が漏れる。彼はそこを咥え込み、舌にはめたピアスでわざと引っかくように刺激して、味わったことのない感覚に全身が粟立ち背筋が震えた。それに気をよくしたのか、彼は更にもう一方を抓んだり捏ねたりして、そこだけを執拗に弄んだ。 「ぁあ………ゃ、あっああ………!」  自らの胸に押し付けるように彼の頭を抱いた。触れられるすべてが次々に快楽と愉悦を生みだして、私の身体は震えあがるほど喜んだ。大袈裟な音を立てながら胸をしゃぶり、じんじんと甘く痛み始めた頃になってようやく解放されて、紅く熟れて敏感に作り替えられたそこは外気に触れるだけで新たな刺激を生みだし小さな喘ぎが喉を鳴らした。中心はとうに芯を持って立ち上がり、無意識に内股を擦ると彼の大きな手が伸びてそこに触れた。 「ひ、あっ、ぅく………んっ……………」  固く目を閉じ、じわじわと追い込んでくる快楽を逃すよう努める。胸を弄られただけで蜜を溢れさせるそれをざらついた彼の手が包み、その蜜を塗り込むように下から上へゆっくりと扱かれて、自分のものとは違う手が敏感な部分に触れるたび先の予測できない動きに更に期待は高まった。竿と同時に彼は器用に裏筋を刺激して、快楽は理性の隙間を次第に埋めていった。暗く閉ざされた視界では彼がどんな表情をしているかなんて分からなくて、飽きることなく素肌をなぞる指先と、直接的な刺激を与える熱い手だけにすべての神経は集中した。粘着質な水音が耳を犯し、焦らすような単調な動きに痺れを切らしたのは私の方だった。彼の手に自らの手を重ね強く握った。 「やるなら………っ、もっとちゃんと、して………」  恥じらいなんてなかった。彼から与えられる圧倒的な快楽が欲しくて、ひれ伏したくて、目の前で不敵に笑った彼を誘うようにもっともっとと肢体をくねらせた。彼は無言のまま欲に濡れた瞳で私を捕らえ、視線を絡み合わせたまま右手で私のものを扱き先端を指で引っかいて、私はあられもない嬌声を漏らしながら更に蜜を溢れさせた。快感に胸を反らせると彼が再びそこに吸い付き、身体は一気に追い詰められた。 「ああ、だめっ、も、出る………っゃあ、あ、」  亀頭を包み込むようにして撫でられ先端を割り開き、擦るように指を押し付けられて、私は彼の手の中に勢いよく吐精した。身体中を渦巻いていた渇きが一気に潤され、久しぶりの感覚に爪先がぴくりと痙攣する。射精後の倦怠感に四肢を弛緩させ、涙で視界を霞ませながら彼を見やれば、この世のものとは思えないほどに甘美な微笑を湛えて私にキスをおとした。胸が熱く満たされて、彼の首に腕をまわして色のない薄い唇にかぶり付いた。

ともだちにシェアしよう!