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第16話

 彼は額に汗を散らしながら、呼吸と共に弛緩と収縮を繰り返す肉壁を指で舐り、調べ、確認し、一定の感覚で指を動かし、途方もない時間をかけて私の身体を弛ませた。彼の指の感覚を知るたび身体は大きな熱を上げ、吐息混じりの掠れた嬌声が自然に零れて、彼は少し身じろいで唇にキスをおとすと蕾に収められた指をゆっくりと抜き去った。その感覚に背筋が粟立ち、そして胸は激しく高鳴った。間近にある彼の顔を包んで、私から口づけて、そのまま汗まみれの首に腕を回してきつく抱きしめた。 「痛かったら、言って」  私は何度も首を縦に振った。彼が言うのなら何だって良かった。  先ほど吐き出したばかりの彼のものは再び大きく膨らみ張りつめて、耳元で彼の乱れた吐息を感じ、違和感の残る蕾は期待と不安が入り混じりぱくぱくと震えたように思えた。彼は私の耳を舐め赤く膨れた胸の飾りを捏ねながら、いきり立った自身を静かに蕾に宛がった。既に興奮は頂点に達し、胸は痛いほどに締め付けられて、早く欲しいと言わんばかりに力強く彼にしがみ付いた。  酷い優越感のようなものが全身を駆け巡る。私はこの人を選んで、この人に選ばれたのだと周囲に(とりわけ彼の過去の男たちに)触れ回りたくなるような、けれどこの幸福を一生ひとりきりで大切に仕舞っておきたくなるような、なんとも形容しがたい感情に支配された。彼の肌や、呼吸や、声と言葉と優しさも、今こうしている時間、それらすべては私と彼だけのもので、そして今ある私自身も、すべて彼に捧げるものなのだ。彼が私を、望んだのだから。 「ッあ、くっ、んぁあ!」  指とは明らかに異なる確かな質量に、痛みと息苦しさが襲う。内臓を下から押し上げられる感覚に、束の間呼吸を忘れて身悶えた。 「きつ………はあ、息吐いて」  彼も苦しそうに眉根を寄せて、何度も小刻みに腰を揺らした。言われた通りに息を吐こうにも、何をどうしたらいいのかさっぱり分からない。とにかく苦しかった。その辛さから涙がいくつも筋を作り、力いっぱい彼の背中を掻きむしった。 「痛い? やっぱりやめる?」  私は咄嗟に首を横に振った。痛い、やめてくれと言えば、きっと彼はやめてくれるだろう。そして私を抱き締めて、あたたかい手で背を撫でて、ごめんね、なんて人を誑し込むように囁くのだろう。  私は必死に呼吸を整ようと勤め、傷だらけになった彼の背に指を滑らせ意識を下腹部に集中させて力を込めた。彼は束の間(聞こえるか聞こえないか、これだけ密着していなければ聞き逃していたかも知れない)小さく呻き、先端だけを中に埋めたそれをびくりと震わせた。  本当ならさっさと全てを押し込んでしまいたいだろうに、私を気遣って大袈裟なくらい時間をかけてくれる彼にキスを強請る。彼はすぐにそれに気付いて、流れた涙を吸い取ると唇に噛り付いた。舌のピアスが私の歯に触れ、かちゃりと重みのある音を鳴らす。舌先でそれに触れるとつるりと気持ちの良い感触がした。

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