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第16話 大事な宝物

「あっ、ンっ……はぁっ、一誠っ」  一誠の指が、今、俺の中にある。動かされる度にひどいくらいに濡れた音がして、甘い香りにむせそうで、中を擦られるとたまらない気持ちになる。 「やぁぁぁっ……ン、んんっ」  喉奥から甘い吐息が零れて、自分の呼吸なのに、舌が痺れるんだ。痺れる舌で一誠の唇を舐めたら、キスしてくれた。キスされて、口の中も、身体の奥のところも、ぐずぐずに溶けていく。溶けてなくなりそうなくらいにびしょ濡れなのに、孔は一誠の指を捕まえて離そうとしない。 「トウ、平気?」  今、一誠にしゃぶりついてる。すごく物欲しそうに俺の中が一誠の指にしがみ付いて、絡み付いて、やらしい音を立ててる。  こんな自分は知らない。こんな声も、心地も、俺には似合わない気がして、すごく怖い。知らないことばっかが溢れて、快感に、気持ちイイことに溺れそう。  平気なわけないじゃんか。  だから、首をブンブン振った。声なんて出ない。そんな余裕ない。甘い声をあげて喘ぐか、一誠って、名前呼んで、そのたんびに喉奥が熱くなって、また悶えて。 「トウ、痛む?」  また首を振って、それで気がついた。泣いてる。だから、一誠は俺が無理してるんじゃないかって、そう思ったんだ。 「トウ」  ほら、一誠が、苦しそうにしてるくせに、それでも俺を優しい声で呼んでくれる。大丈夫じゃないけど、大丈夫だよ。なんで、そんな優しいの? 一誠がそんなんだから、ダメなんじゃん。そんな一誠だから好きになっちゃったんじゃん。 「へ、き……気持ち、イ……だけ」  そっと震える手を伸ばして、頬に触れて、首にしがみついた。 「い、せ……こうしても、い?」  一誠に掴まってれば、抱きついてれば。 「……トウ」 「すご、気持ちイイんだ……中が熱くて、おかしくなる」  ほら、一誠に触れたら怖くなくなる。ふぅ、って、深く息がつけた。そして、好きな奴の腕の中にいれて安心して、嬉しくなって、中が指にきゅんと、またしがみついた。 「一誠? どうし、あっ! やぁぁンッ……っ」  一瞬、またしかめっ面をしたから、ダメだったのかと思って、手の力を緩めたら、しがみつく腕をすり抜けた一誠に鎖骨を舐められた。 「あっあぁっンッ」  舐めて吸われて、首筋に小さな痛みが走る。痛みは首筋にも肩にも、落っこちて。 「ひゃあぁぁぁンッ」  胸にも。 「トウ」 「あ、やだ、そこっ、はぁっ……ンッ、いっせ、キスしたらっ」  乳首にしゃぶり付かれて、こんな背中を反らせて喘いだりして。 「やぁっ……ぁっ、んっ……んふっ……ンッ」  もっとして欲しそうに胸を突き出して、一誠の舌先に自分から押し付けてる。はしたないって思うのに、なのに、もっとって、思ってる。恥ずかしいのに、たくさん齧ってよって、願ってる。齧って、舐めて、吸って、そんで。 「トウ……」  そんで、乳首が真っ赤になるくらい、一誠に強くいじられたい。 「可愛い」  名前呼ばれて顔をあげたら、ココア色の瞳がこっちを見て笑ってくれた。可愛いなんて言って、本当に大事そうに俺の上に覆いかぶさって、深くしっとりと口付けされる。 「ン、ん……ん、ンッく……っ」  まるで深呼吸みたいなキス。 「ぁ……一誠……」 「ん?」  恋なんて、誰がするか、って思ってた。けど、今は。 「も、へーき」 「……」 「あの」  変な奴。俺は一誠に押しつぶされたりなんてしないくらいに頑丈なのに、重さが乗っからないようにって気使ってくれる。本当は蜜香で頭ん中ぐらぐらしてるはずなのに、それでも俺に合わせてゆっくりしてくれる。初めてのセックスだから、ビビり屋の俺のことを大事に思って、一誠はこんな、汗かいて、のぼせたような、苦しそうな顔しながら、それでも微笑んで、キスしてくれる。  どんだけ……バカなんだよ。俺なんかのこと、こんな大事にしてくれる奴なんて、どこ探したっていない。 「一誠、来て、いいよ」  変で、珍しい奴。 「俺ん中、に、早く、来てよ」  上体を起こして、首伸ばして、そっとキスをした。セクサノイドだけど、ヒートも恋もそんなスイッチも全部いらないって思ってたから、誘い方なんてわかんないけど。もう、これが限界。欲しいんだ。  だから、言い逃げみたいにすぐに俯いて顔を隠した。  もっと色っぽく、甘ったるく、この蜜香と同じくらいに誘惑できたらいいんだろうけど、あいにく俺はそういうの、よくわかんない。やらしい言い方も、一誠をその気にさせて興奮させるような言い回しも知らない。 「一誠?」  返事もしてもらえないくらいに、変な言い方だったのかと、恐る恐る視線を一誠へと向けた。もしかして、萎えたかなって、ビビりながら。 「はぁ……」 「いっ」 「もしも、怖くなったら、俺のどこでもいいよ。噛んで」 「え? は? 噛むなんてこと、するわけ、ぁっ」  胸が高鳴った。ときめいたんだ。いつも優しい一誠が熱そうに顔をしかめながら服を脱ぐとこを見て。そして、今から、このたくましい身体に俺は抱かれるんだって。 「本当に、噛んでいいから。抑え、きかない」  そして、揺れる熱の硬さに、孔が。 「ぇ、一誠、ぁっ、あああああああっ!」  ずぶりと突き刺さった塊に一瞬で身体が燃えた。 「っ、狭いっ」 「あ、やぁぁぁっ! あ、一誠っ、ぁっ」  俺の中に深く突き刺さる一誠に全身が痛みどころか湧き立つように悦んで、トロトロに蜜まみれになっていたペニスの先端から嬉しそうに体液を弾かせた。 「やぁっン、あっ、一誠、いっせ、ぁっ……ん」  やらしく濡れた体内に全然違う存在感が突き刺さる。ずぶずぶに擦り付けられる熱はたまらなく気持ち良くて、甘い声が止まらない。甘い甘い蜜も、イったばっかのペニスから、一誠を咥え込んだ孔から溢れて、やらしい音を響かせてる。 「あぁっ、ンっ……ん、んっ……あっ」  音だけでイっちゃいそう。 「あっ、やぁン……ぁんっ……一誠、そこ、やっ……気持ち、イ」 「トウ」  ガツガツと攻め立てられて、腰を打ちつけられると、熱い吐息を零す姿にゾクゾクした。男の顔をした一誠がよだれ垂らしそうなほどカッコよくて、やらしくて。 「? 中、きゅんきゅんした」 「!」 「気持ちイイ? トウ」  俺のことを揺らしながらそんなことを訊く一誠の声がかすれてる。激しく俺の中を蹂躙していく強さがその声にも滲んでる気がして、も、やだ。また、一誠のこと締め付けて、しゃぶりついて、奥まで来てって誘ってる。うねって、濡れて、もっと奥まで来やすいようにって、全身が一誠のことを欲しがってた。求めてた。 「気持ち、イイに決まってる、だろっ」 「よかった」 「!」  腰揺らしながら、笑って、そんでこめかみに伝う汗が。 「! トウ」 「好きな奴のくれるもんなら、なんだって欲しいに決まってるだろっ」  汗すら欲しくなるくらい好きなんだ。だから。 「お願い、一誠、俺の、中にちょうだい」 「……」 「おねがっ、あぁぁぁぁっ! ン、んんっあっ……ぁ、奥っ」  揺さぶられて、泣きそうなくらいに嬉しいよ。奥までグッて押し込まれるのがたまらなく気持ちイイ。 「トウに、全部、あげるよ」 「あっ……んんんんんんんんんっ!」  力強く押し込まれて、刺し貫かれて、もう高いとこに飛んでいきそうになった瞬間、低くかすれた声で、全部あげるって囁いた唇に口付けられた。  吐息も、唾液も、精液も、全部を俺の奥深くにくれる。身体が一誠でいっぱいになって、好きな人に満たされて、頭ん中が真っ白になるくらい放ってた。  好きな人の腕の中で、感極まって、そんで、すごく気持ち良くて、嬉しくて、なんか、壊れたみたいに涙が止まらなかった。

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