ヒリヒリとマスタードの辛さが残る舌で、自分の歯をなぞりながら、早く帰ることばっかり考えてた。遊園地近くのホテルはどこも満員で、予約なしで泊まれるところなんてなくて、それにどっちにしたって、明日の朝早くにケーキの仕込みを始めないといけない一誠には急な泊まりは不可能でさ。 「トウ」 　今はその歯で一誠の肌を齧ってる。 「やっ……んんんっ」 　じゃないと、玄関先なのに、甘ったるい声を上げて、よがりそうになるから。 「トウの肌、甘い」 「も、バカっ、さっきのっ」 「辛かったね」 　あんな辛いの売っていいのかよ。めちゃくちゃ辛くて、帰り道の間ずっとヒリヒリしてた。 「ン、んっ……ぁ、一誠、もっと、して、キス」 　今はその舌で一誠の舌を撫でて擦って、唇でしゃぶりついて、唾液を掻き混ぜあってる。くちゅくちゅって音を玄関なんて場所で立てて、そんで。 「やぁっ……っン」 　発情してる。「行ってきます」って言って「おかえりなさい」って言われるはずの場所で、一誠のことを欲しがって、身体をやらしくくねらせてる。 「トウのここ、びしょ濡れ」 「あ、だって、欲しい」 　一誠を突き刺して欲しくて、女のあそこみたいに、とろりと濡れて甘い香りまで漂わせて、はしたないって思うけど。 「一誠、早く、欲しっン、あっ」 　思うけど、でも、頭ン中はもう知ってるあの感覚をせがむばっかで止まらない。あの、身体が満たされる感じ。ずっと欠けていた何かがちゃんと嵌って、埋まって、ホッとするような安心感。 「一誠っ」 　早く、埋めて欲しい。足りないとこ、全部、帰り道ずっと欲しかったものを俺の中に捻じ込んで欲しい。 「早く、来て」 　目の前でココア色の瞳を覗き込んだ。腕で首にしがみついてせがんだ。 「あっ……あぁぁぁぁぁぁぁっ！」 　足を抱えられて、玄関扉に背中を預けるようにしながら、浮いた状態で刺し貫かれる。ずぶりと一気に蜜でぬかるんだ孔に突き刺さる快楽に仰け反った。 「あ……ぁ……っ」 　孔の口が開かれて、奥深くまで抉じ開けられ、俺の中が一誠で埋まる感覚。 「はぁっ……ン」 　足だけじゃなくて、何もかも浮いたように感じるほど、気持ち良くて、自分の服だけじゃなくて、顎んとこにも飛ぶくらい、思いっきり弾けた。 「トウ」 「あっあぁぁっ！　ン、ぁ、今、イったばっか、なっ……あぁっン」 「トウ」 　突き上げられながら揺さ振られる身体は快感にものすごく貪欲で、苦しいくらいに根元まで咥え込みながら、白い蜜を吐き出したばかりの鈴口からはやらしくて甘い蜜がまたもっと溢れて、玄関に似つかわしくない音を響かせてる。ひどく卑猥な音は恥ずかしいのに。 「あぁっン、もっと、してっ、ぁっ、そこ、ズンって……あぁああっ！」 　尻のとこを両手で持たれて、割り開かれた身体に打ち付けられる杭がたまらない。服なんてほぼ着たままだった。とにかく、一誠と早く繋がりたかった。玄関なのに、こんな場所にこんな甘い蜜零して恥ずかしいのに、ベルトをガチャガチャッ雑多な音を立てながら外して、足元にはくしゃくしゃになったズボンが放置されてるなんて、おかしな格好なのに。 「トウっ、も、一回」 「あ、あぁぁっン、ン、して？　奥で、一誠の飲ませて」 　格好なんてかまってられなかった。 「トウっ」 　一誠の声がもっと低くなる。穏かで温かさは変わらないのに、俺の蜜香に応える時だけ混ざる色気のある声色に、孔が、じゅんって、また濡れた。 「あぁぁっ」 　腰を強く乱暴なくらいに振って、俺の中で暴れる雄に震える。 「も、俺も、またイっちゃいそ」 「っ」 　俺の中で、もうはちきれそうなほど育った杭に中を全部擦られたら、もう我慢なんてできそうにない。 「いいよ。トウも一緒にイこ」 「ン、ぁっ……ンンっ、ぁ、そこ、いっぱいがいい。奥んとこ」 「ここ？」 「あぁぁぁぁっ……イくっ、も、ぁッ、一誠っ」 　一誠の、欲しい。お願いだから、全部注いで欲しいんだ。熱も体液も、全部、俺の中に入れてよ。 「ン、ぁっ……イっ、く……っ」 　数回、奥深くをペニスで抉られたら、もう無理だった。がつがつと攻められて気持ち良さそうに濡れる孔をぎゅっと締め付けて、一誠の、種を。 「一誠の、全部、好き」 　自然と口をついて出た言葉に素直に照れてしまった。いつもなら怒ったりして誤魔化すのに、きっと今、俺の中に一誠が入ってるから、だから、似ちゃったんだ。たくさんキスした唇をうっとりと見つめながら、ふわりと零れた告白。顔を埋めて隠れたいけどさ。 「ァ、ん、好きっ」 　一誠が嬉しそうな顔をするから、搾り取るようにしゅぶりつきながら、自分のペニスからも甘ったるい蜜を弾かせてた。 「トウ」 　ずっと浮いたまま、はしたなく開いた脚の間を深く貫かれて、しがみついて、玄関で。 「一誠の、ドクドク言ってる」 「トウ」 「ンっ……ん、ん」 　口付けられて、舌を絡ませながら、中がまだ硬いペニスに舌の真似事みたいに絡みつく。 「掴まってて、トウ」 「ぇ？　あっ、ン」 　俺を抱きかかえたまま、歩いて、寝室まで運んでしまう。信じられない。俺だって、ちゃんとそれなりに体重あるほうなんだけど。 「まだ、いい？　トウ」 「……変なの。全然平気なのに」 　まだ大丈夫、なんてそんな優しくしなくたっていいのに。俺は――。 「変じゃないでしょ。好きな子のことは大事にしたくなるだろ？」 　俺は――。 　一誠の全部が好き。笑った顔も、今日見せてくれたちょっとバカなことも、変なとこも全部、まるごと一誠の欠片はどれひとつとっても愛しくて仕方がない。 　今、目の前で眠る一誠の唇から零れる寝息も、すごく好きだ。 「……」 　帰って来て、何よりも真っ先に求めるほど熱烈ではしたないセックスして、中から溢れるくらい身体を一誠で満たしてもらった。貪欲で激しい熱に沸騰したように全ての体液が煮える感じ。 　その後に訪れる、静かで穏かな、こういう時間もすごく好きなんだ。優しくて、泣きそうになる。 「っ」 　だから、顔が見えないように懐に潜り込んで目を瞑ったら、ちゃんと寝てるくせに、一誠の心臓はとても穏かな鼓動をさせるくせに、当たり前みたいに俺を抱きかかえるんだ。抱えて、閉じ込めて、俺の頭のてっぺんを寝息でくすぐる。 　ホント、全部好きだよ。何もかも、一誠のくれるもの全部が、本当に愛しくてさ、困るくらいなんだ。