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第40話 ラブドール

 そっと、先端にキスをしただけで、ドキドキした。考えたら、俺、何かを食べたりとかしないから、口の中って、あまり何も入れたことがない。舌に触れる一誠の味、頬の内側で擦れる硬くて太い熱の塊みたいな、一誠のそれ。 「んっ、ン……んんっ」  どうしよう。溶けちゃいそう。 「……トウ」  一誠の味は甘くないのに。苦いのに。 「ん、一誠の……」  なんで、美味しいって思ってしまうんだろう。口いっぱいに頬張って、頭を上下させてしごいてあげる。いつも、一誠の掌でしてもらってるみたいに、口で吸って舐めてもらってるのみたいに、丁寧に舐めて、上手に吸って、そんで、喉奥で味わってる。 「トウ」  名前を呼ばれるとお腹の底が重くて熱くて、おかしくなりそう。蜜香はもう漂っているのかどうかもわからないくらい、一誠の匂いが溢れてる。それにクリームの甘い香りもするから。 「お尻、こっちに向けて」 「ん……んんんんっ」  ちゅって、すごいところで、キスの音がして。星が点滅した。目の前でチカチカって綺麗に瞬いて、そして、恥ずかしくて爆発しそう。 「や、やだ、そんなとこ、舐めたら、あ、あぁぁ、舌、そんなとこに、入れたら」  背筋に快感が走った。ビリビリって。この人の優しい舌に一番敏感なとこを可愛がられて、内側から全部蜜になって溢れそう。はしたない身体。やらしくて気持ちイイことに、こんなに悦んでる。一誠の舌を汚してしまってるような、犯してしまっているような気がして、慌てて手を伸ばした。その手を指先で捕まえられて、邪魔できないように絡め取られて、そして、一誠の舌が孔の口よりも深いところまで、俺の中にまで入ってる。そんなことしなくたって、俺の身体はすぐにだって、一誠のことを受け入れられるのに、今、乱暴なくらいにペニスを突き刺されても、どこも痛くなんてない。根元まで咥えこんで、いやらしく中が一誠にしゃぶりつくよ。だって、そういうふうにできてるんだ。だって俺は――。 「慣れてって、言っただろ?」  ラブドールなんだから。 「一誠……」 「俺に可愛がられるのに、慣れてって。そのために、トウは作られたんだ」  愛されるために存在してる。名前のまんまだよ。ただ、一誠のためだけのドール。ただ、一誠にしか恋ををしないセクサノイド。 「わかった? トウ」  その価値をわかっていないと一誠が呆れて怒って、そして笑っていた。価値なんてないよ。本当になかったんだ。 「うん」  でも、今はそう思ってないよ。戸惑うし、疑ってしまいそうになるけれど、何より、誰より大好きな人が俺のことを大切にしてくれるのなら、俺も大切にするよ。ちゃんと、自分に価値があるって覚えたよ。あと、もうひとつ覚えたんだ。可愛がられるの、慣れないといけないんだろ? 「ね、一誠」  だから、そっと、舌で濡らしてもらった孔の口に片方の指を添えた。そして開いて、孔を晒しながら、もう片方の手で一誠のペニスを握って、しごいて。先走りを蜂蜜みたいに唇に塗ってから、舌で舐めて。 「じゃあ、今度は、これで俺のこと、たくさん、可愛がってよ」  ペニスの先端にキスをした。 「早く、欲しいんだ、一誠」  この熱の棒を俺の中に突き刺してって、開いた身体を差し出す。 「やぁ……ン」 「トウ」  ベッドに押し倒されて、仰向けになると上から一誠が覆いかぶさってくれた。その瞬間にぶわっと立ち込める甘い蜜香にむせてしまいそう。 「あっ」  ほら、声も蜜みたいに甘い響き。唾液に濡れた孔の口を自分の指先で割り開いて、挿入の手伝いをした。硬い先端が俺の中に入ってくる。途中、前立腺刺激されたら、ペニスがピクピクって跳ねて、一誠が可愛いって笑った。  可愛くなんてないのに、なんでか言われると胸のところがくすぐったくて嬉しかった。 「あっあぁぁぁぁ!」  身体の中が一誠の熱で埋まっていく。 「トウっ、中が」 「あ、ン……ぁ、あああああっ」  根元まで全部俺の中にあるのが嬉しくて、気持ち良くて、一誠が深くまで突けるようにって、自分から足をもっと大胆に開いてみせる。 「あ、っあ、あぁ」  そこをやらしい音を立てながら、小刻みに貫かれて、奥を突かれて、ベッドのシーツをぎゅっと握りしめる。ぐちゅずちゅって、一誠の腰使いに合わせて聞こえる音と、その音と一緒に送り込まれる気持ち良さに、足の先がきゅっと丸まった。 「や、ぁ、一誠」  快感に火照る身体は色づいてて、ピンク色になった膝小僧にキスされただけで、ペニスを咥えた孔がきゅんとしゃぶりついた。 「トウのなか、熱くて、柔らかくて、狭くて」 「や、言うな」  言いながら、ベッドが軋むくらいに中を掻き混ぜられてたまんない。もっと刺されたいって、全身がまた甘い匂いをさせて、おねだりしてる。  好き好きって、一生懸命告白してる。 「なんかさ」 「?」 「トウは自分のこと偽物とか色々思うのかもしれないけどさ」 「……」 「偽物とか関係ないよ、ただ、可愛いよ。誰より」  涙が溢れちゃったじゃん。 「バカ……ぁ、ン」  大好きだよ。 「んあっ……ぁ、あっ、変人、も、ぁ、奥」  きっと雨の中、真っ赤な薔薇みたいな傘を差し出された瞬間から、もう好きだった。 「あっやらっ、そこ、ぐりぐりしたら、ひゃああっ……お人、好しっ」  こんなセクサノイドにあんなに優しくしたら、惚れられる決まってるじゃん。セクサノイドだぞ? あんな雨に濡れてゴミ置場の前に立ち尽くしてるような奴、簡単に部屋に入れるなよ。上がり込んでいすわられたらどうすんの? 優しいとこに付け込まれて、利用されたり、ひどいことされるかもしれないのに。 「あっンっ、あんっ……ぁっ俺なんて選んで、貧乏くじなんだ、ぁっ、からっ」  初めてのデート、遊園地楽しかった。嬉しくて、幸せだった。一誠といると胸のところがいっつもあったかいよ。ココアのせいじゃないよ。一誠があっためてくれるんだ。 「バカ、あっ、あっ、バカバカ、あぁぁっ、ン」 「トウ」  俺のこと、幸せにしてくれてありがとう。好きになってくれてありがとう。たくさん、いっぱい。 「トウ、俺も好きだよ」 「!」  好きだよ。俺のほうこそ、大好きだよ。 「あ、あぁぁぁ! ン、一誠、もっ、イっ」 「一緒にいこう」  激しく突き上げられて、お腹の一番奥んとこに届いてる。一誠の太くて硬くて熱いペニスが俺の奥をコンコンってノックしてる。 「ここ、出して? 一誠の、飲ませて?」 「もちろん」  赤ちゃんできないけどさ、でも、一誠のこと、俺が幸せにしてあげる。 「中に出すから、全部、ちゃんと味わって、トウ」 「ん、ンンっ、味わうっ、いっぱい、ちょ、だいっあ、あぁっ、そこ、気持ちイ、ズンズンってしてっ」  だって、俺は一誠に愛される、唯一の、ラブドール、なんだから。 「トウっ」 「あ、イくっ、イっちゃうっ、一誠、俺、も、イくっ、イっ……」 「トウ、愛してるよ」  深く突き刺さるペニスにきゅって抱きついて、足で一誠のこと引き寄せて、背中に回した手でしがみついた。 「ンン、んんんんんっ!」  揺さぶられて、奥を貫かれながら、一誠が吐息も俺にくれた。全部、一誠の全部、俺の中に流し込まれて。 「んんんっ…………っ!」  心臓ないのに。 「あっ……」 「はっ、っ……トウ」  一誠が俺の中で、ドクドク鳴らすから。 「トウ? どうしたの?」  しかめっ面なのに、とっても気持ち良さそうに俺の中でイった一誠が、こめかみに汗の粒を光らせながら、俺を覗き込んだ。唇が綺麗に色づいてるのは、俺を激しく貫きながら、深くまで口付けてくれてたから。その唇が濡れてるのはキスで交わし合った唾液のせい。ドキドキするくらい、色っぽくて、男らしくて、いつだって俺に優しい一誠。 「ううん。ただ、大好きな一誠が俺の中でイってくれるのが嬉しいだけ」  ドクドクって、感じる一誠の躍動がさ。 「もう、そんなまた可愛いこと言って」  俺の鼓動みたいって思ったんだ。まるで、一誠から命を与えられてるみたいで、すごく嬉しくてたまらなかったんだ。 「止まらなくなっちゃうじゃん」 「いいよ」  一誠が俺の心臓みたいって、思ったんだ。 「いっぱいして、俺のことたくさん可愛がって、甘やかしてよ」  二回目をねだるようにキスをしたら、笑って、俺の中でまた一誠が飛び跳ねてた。

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