4 / 12
第4話
「先生の連れの眼鏡スーツ、まだ店内で飲み食いしているからさ、付いて来て」
身なりを整え言われるままに梶の後ろを付いて行くと、従業員出入り口と書かれたドアが見えた。
「タミセンさ、忘れ物ない?」
「鍵と財布しか持って来てねぇから……」
ポケットから取り出して見せる。
「OK。俺はまだバイトがあるから送ってやれないけど、一人で大丈夫?」
「別に怪我している訳じゃないからな。問題ねぇよ」
学校では何時も笑顔の梶が無表情に見ているだけで、責められている様な気になり居た堪れない。
「顔色悪いけど、本当に平気?」
苛立たし気に眉を顰められ、思わず俯いた。
「俺は平気だから、お前は仕事に戻れ」
それだけ言うとたいした礼も言わないまま、俺は逃げる様にその場を去った。
✜
家に帰ると、アルコール度数の高い酒を持ってリビングに戻った。
静寂は辛いとテレビを点け、グラスに酒を注ぐ。
酷いものを見せてしまった。
梶の責める様な顔を思い出し、堪らずに酒を一気に飲み干す。
汚物を見るような目で見られるかもしれない。
そんな事を考えては辛くなり、落ち込む気持ちを誤魔化すように酒を流し込み、現実から目を背けた。
ともだちにシェアしよう!