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第5話
翌日。
死刑場へ赴くような心境で学校へ向かった。
助けてくれた梶が言いふらす事はしないだろうが、人の口に戸は立てられない。
醜聞は何処からともなく漏れるものだ。
今や時の人となっているかもしれないと、胃をキリキリ痛ませながら門を潜るが、特に何の反応もなかった。
梶と顔を合わせるのは気まずいが、逃げる訳にも行かず腹を括って教室に向かうが、梶の姿はなかった。
変態教師の顔など見るのも辛いと、休んだのかもしれない。
梶には申し訳ない事をしたと、陰鬱な気持ちでその日を終えた。
✜
昨日に引き続き今日も休んでいたらと心配したが、教室へ行くと梶の姿があった。
常に人の輪の中心に居る梶は今日もクラスメイトに囲まれ、楽しそうにふざけあっている。
何時もと変わらない光景にホッと息を吐く。
不意に梶の視線がこちらに向き、緊張で身体が強張った。
無視をされるか、顔を顰められるか、色々な想像をし覚悟を決めて来たが、予想に反して梶は何時もの笑顔で手を振り、挨拶をした。
「タミセンおはよう」
醜態を見られたのが夢だったと錯覚する様な梶の態度に面喰い、挨拶を返す事が出来ず、暫くその場に立ち尽くしてしまった。
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