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第9話
頬に布団とは違うしっとりとした感触に違和感を覚え、目を開けると人の肌があった。
訳が分からずにソレから距離を取ると、上半身裸の梶と目が合った。
何がどうなっている?
「おはよう」
爽やかな笑顔で挨拶され、益々混乱した俺は慌ててベッドから這い出た。
「すまない」
「何が?」
「酔って、寝床を間違えたらしい」
「間違えてないよ」
間違えて……ない?
「タミセン、酔っぱらって俺にゲロぶちまけたの覚えてる?」
ゲロを……。
「で、すまんって謝りながら俺の腕にしがみ付いて、一緒に寝るって駄々捏ねたんで一緒に寝たんだけど、覚えてない」
……全く覚えていない。
助けてくれた恩人。しかも生徒に、俺は幾つ貸を作っちまったんだ?
「気持ち悪い思いをさせて悪かった」
床に頭を付け、平身低頭謝ると梶は笑った。
「ゲロくらいで大げさだよ。全然平気」
「そうじゃなくて」
「ん?」
「見たんだろ。画像」
「あの胸糞悪いハメ撮り画像の事? 見たよ」
嫌悪を含む声と言葉に胃が引き攣る。
「あんな事する人間と一緒に寝るとか、気持ち悪かっただろ?」
「別に?」
先程とは打って変わって、軽い調子の返事に面喰っていると梶はニヤリと笑った。
「だって俺、トイレで緊縛されてバイブ銜え込んでたタミセン見て、興奮したし」
嫌悪ではなく……興奮……したのか?
確かに十代には刺激の強いもんだったかもしれないが……。
混乱を極めているとベッドから下りて梶は俺の目の前でしゃがみ込んだ。
「そんな困った顔しなくていいよ。あいつみたいに抱く気ないから」
屈託のない笑顔が『勘違いするな』と言っているようで胸が軋む。
言われなくとも分かっている。
十七の子供が四十路のおっさんを抱くとかあり得ないと。
分かっていると言うのに……。
俺は何でショックを受けているんだ?
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