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「ん、…」
太陽の眩しさに目を覚ますと、そこには瞼を閉じた“王子”の姿があった。
西日に照らされた長いまつ毛と、きらきらと輝くブロンドの髪があまりにも美しくて、僕は思わず手を伸ばしていた。
「……イタズラか?」
まるで毛並みの良い猫を撫でているかのような手触りの良さに感嘆していると、目を閉じたまま男はそう言った。
「すみませ…」
咄嗟に手を引き謝ろうとすると、僕の言葉を遮るように「心配した」と彼はつぶやく。
じっとこちらを見つめる硝子玉のような瞳に、心臓が跳ねたのがわかった。
「っ…家の前まで来たはいいが、どこの部屋か分からなくてな」
そう言って窓の外に視線を移した王子の頬は、陽に照らされているためか色付いているようにも見える。
「えっ…と、すみません!」
彼の言葉にぼんやりとした頭が少しずつ冴えてきて、僕は慌てて体を起こした。
急に起き上がったせいで視界がぐにゃりと歪む。
「おい。大丈夫か?」
倒れそうになったところを助けられたのは、これが一度目ではない。
そうだ、彼とは病院で会って…。
徐々に蘇ってくる記憶に、より一層心臓は鼓動を速める。
「っ…ほんと、すみませんでした」
そう言い残しカバンを持ち急いで車を飛び出す。
堪らなかった。
心臓が鳴る度に、自分が自分でなくなっていくのが分かった。
荒くなる呼吸と、じわりと下着が濡れる感触。
アパートの階段を登りきり、突き当たりにある自分の部屋。カバンの中から鍵を探し出し、必死に鍵穴に差し込もうとするが、手が震えて上手くいかない。
「はぁ…っ、雪」
走ってきたのか息が上がった男は、僕の震える手を掴み鍵を取り上げ、代わりに鍵を開けてくれた。
パニックになった僕の心を落ち着かせるように優しく抱き寄せ、部屋の中へ導いた王子の呼吸は荒いままだ。
「…しばらく部屋から出るな。それから…っ、鍵はちゃんと閉めておけよ」
ルイはそれだけ言い残し部屋を出て、扉を背にその場にしゃがみこんだ。
「っ…これは、キツいな」
今にもちぎれそうな理性を繋ぎ止めた男はそう呟いて、下唇を噛んだ。
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