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家に着くやいなやシャワーを浴び、晩ご飯も食べずにベッドに横になる。家に向かいながら“今日は賞味期限の近い納豆を食べてしまおう”と考えていたくらいだったのだが、風呂から上がりに吐き気を催した僕は 夕飯を取ろうという気をすっかり無くしてしまった。 「…はぁ」 今日は散々な一日だった。 薬の副作用が思っていたよりひどく、午後からも頭痛や倦怠感に襲われる羽目になったのだ。 しかもそれが接客中に酷くなったものだから、本当に参ってしまう。 帰り道で坂下くんに慰めてもらったことだけが唯一の救いだ。 「辞表、書かなきゃな…」 自らが力なく呟いた言葉に 思わず泣きそうになる。 医者からオメガであると告げられた時から いつかこうなることは何となく分かっていたのだが、ここまで簡単に切られるとは思ってもみなかった。自分にとって会社は一つだけだが、会社にとっての僕はほんの僅かな存在なのだろう。 未来への不安やどうにもならない悔しさを誰かに吐露したい気持ちはあるが、生憎そんなことができるはずもなく。 そういう感情に蓋をしようと瞼を落としても、悶々とする時間は続いた。 眠れば楽になれるだろうと思っていたのに、頭痛が眠りを阻もうとする。 これでも仕事中よりは良くなった方なのだが、今まで何の病気もせずに生きてきた僕にとってはかなりの負担だった。 薬を飲んで分かったことは、発情期の抑制に対する代償だ。それは自分が想像していたよりもずっと大きなものだった。普通は副作用の少ない抑制薬を長期に渡って飲むのだが、僕の場合 その薬だと間に合わないらしい。また、発情期に慣れていないため パニックを引き起こすこともあるようで、そのリスクも考え 今回は緊急用の短期抑制薬が処方されたのだ。 薬剤師には、あまりにも副作用がひどい時は病院に来るようにと言われたが、来週まで休みは取れないだろう。一ヶ月後には辞める身なので、あまり休む気にもなれないというのが正直なところだ。 何度寝返りをうっても、時計の秒針が刻む音をどれだけ聞いても、悶々とした気持ちが晴れることはない。 この夜が早く明けることを願い、僕は強く目を瞑った。

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