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先生との話し合いの末、体のことを考え 薬は変えることにした。 三ヶ月分の抑制薬が処方されたが、やはりこの手の出費は平社員には痛い。今月末には仕事を辞めなければならないというのに、すでに不安を覚え始めていた。 「…あの」 聞き覚えのある声が聞こえたのは、薬をしまおうと鞄の口を開いている時のことだった。 顔を上げると そこには実に一週間ぶりに見る男の顔があり、少し驚いてしまう。 「あ…こんにちは」 会釈をして笑って見せたが、正直気まずい。 もう二度と会うことはないだろうと思っていたし、何よりあんな別れ方をしておいて 彼に合わす顔などなかった。 「あのさ…。この間は、その…悪かった」 男の口から放たれた言葉に耳を疑う。まさか謝られるなんて思ってもみなかったからだ。 「…いえ。僕の方こそ…すみません」 軽く頭を下げ 謝ると、男は黙って首を横に振った。 自分でも無神経なことを言ったと今では思う。 あの時は気がつけなかったが、彼はきっと心配してくれていただけなのだろう。そして、そんな彼の心遣いを無下にしたのは僕だ。 「そうだ。あと…これ」 ルイは何か思い出したかのように手帳を取り出し、最後のページを開いた。 「俺は受け取れない」 きっぱりとそう言い切った男を、僕は思わず見つめてしまう。 不思議だった。金持ちはお金には貪欲だと思っていたのに、彼は違うのだろうか。それとも王子は札束にしか興味がないのか。 「でも…」 しかしここで折れるわけにはいかない。 実際に迷惑をかけたのは確かだ。それも初対面の相手に。 トイレで助けられたことも、会計を済ませてくれたことも、今は何となく思い出せる。 「詫びがしたいって言うなら、代わりにアンタのこと教えてくれないか」 しばらく続いた沈黙は、彼の思わぬセリフによって破られた。

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