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Halloween Night 第4話
「けどさ、野球拳、イカサマばれたらどーなんの?」
「や……ダイジョブ、ダイジョブ! 心配ねえって! その為に俺ら全員でツルもうって話なんだしー」
――本当に大丈夫かよ?
半信半疑でそれぞれ互いを窺い合う。確かに全員でグルになってインチキをしたなんてことが解った日には、オーナー”ミカド様”の怒りを買うこと間違いなしだ。けれどもあの”仏頂面のドン様”を脱がせてみたいのも譲れない。
「そんならさ、こうしねえ? イカサマはなし。けど対戦相手に龍さんが当たった時にゃ、ぜってー勝つって念じんの!」
――はぁっ!?
あまりにも稚拙というか、対策のひとつにもならないような発案に、皆揃って呆れ顔だ。
「だってオーナーの機嫌損ねんのヤじゃん? だったら正攻法っきゃねえだろが?」
「正攻法って……お前なぁ」
「大丈夫! あの龍が目の前に来たら、頭ン中カラにして『脱げ脱げ脱げー!』ってひたすら念じんのよ!」
――そんなんでホントに勝てんのかよ?
ほとほと呆れ気味で気分も消沈、結局は振り出しに逆戻りだ。
「あーあ、くだらねえこと言ってねえで、やっぱ常連ちゃんたちに確約取り付ける方が賢明って気がしてきた……」
「だな? 結局は地道! それが正解」
ボヤきながらロッカールームを出て行こうとする連中に、新人ホストの圭吾が気をきかせんと洒落を飛ばす。
「まあそう気を落とさないでくださいよー。皆さんの念じが吉と出るか、凶と出るかはこのジャックのみぞ知る! なーんつったら……やっぱ引きますかね?」
当日のお飾り用のドデカいかぼちゃを撫でながら照れ笑いをする圭吾に、皆の視線は唖然硬直――これぞまさにハロウィン提灯のくり抜きかぼちゃのような表情を互いに見合いながら、秋の夜は更けていったのだった。
- FIN -
次エピソード『Allure』です。
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