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青虫。
青虫は、所詮、青虫のまま。
蝶になんてなれっこないんです。
胸がズキズキ痛いです。
苦しくて、息、できないです。
「ほら、楓。渡すんでしょう?」
女性は楓さんを急かすように、肘でツンツン突いています。
いったい、なんでしょうか。
仲が良いお姿なんて見たくもありません。
こんなに好きなのに。
でも打ち明けたら嫌われちゃいます。
ただでさえ良くない容姿なのに。
ぼくの初恋、やっぱり実らないですね。
「わかってるよ、うるさいな! どっか行ってよ!」
「何よその言い草! わざわざ提案してやったのに!!」
……えっと。
「うっせ、別に頼んでねぇしっ!!」
突然、なんの前触れもなく、おふたりはケンカになってしまいました。
というか、楓さん、いつもと違います。
ぼくといる時は、いつもふんわり笑ってくださって、そういう言葉遣いもなさらないです。
これが楓さんの本当の姿――。
地が出るということは、それだけこちらの女性が大切な方だっていうシルシです。
ズキズキ。
ズキズキ。
胸が、とても痛いです。
息ができないくらい、苦しいです。
視界だって、じんわり滲 んできました。
涙、出そうです。
「腹立つわ~、こいつ!! 棗くん、こんなんだけど弟のことよろしくね? あとで弟との出会いとかいろいろ聞かせてね?」
女性は、放心状態のぼくにウインクひとつすると、早足に立ち去りました。
――えっ?
あちらの女性はなんとおっしゃいました?
おかしな言葉を聞きましたよ?
『弟?』
おふたりは恋人さんじゃないんですか?
「あの、これ。体型にコンプレックスがあったんだよね……」
差し出されたのは、ひとつのお弁当箱。
「姉貴に助言もらって、作ってみたんだ」
――え?
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