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進撃(いや喜劇…いやいや悲劇!?)の学会15

「どうやって、タケシ先生を支えたらいいんでしょうか?」  本当はこんな大事なことを、御堂に相談したくはなかった。だけどやるからには自分のできることがしてやりたいと考え、恥を忍んで訊ねてみる。 「王領寺くんは周防の元患者であり、運命の相手という名の恋人だからね。アイツが口にしたことに対して、自分の思ったことを素直に伝えたらいいと思う」 「俺が思ったことを、タケシ先生に素直に伝える……」 「先輩の俺が言えることは、医者の立場から技術面についての指導ができる。だけどメンタルまでは支えることはできない。というかアイツはプライドが高いから、そこまで踏み込ませてもらえないんだけどさ」  うつむきながら瞼を伏せて語る御堂に、何て声をかけていいか分からなかった。タケシ先生の指導医として、そして好きな相手だからこそよく見ている言葉だと思った。 「基本素直になれない周防だけど、王領寺くんの言うことに関しては耳を貸すと思う。面倒くさくて我儘な男だけど、支えてやってくれないか?」 「分かりました。面倒くさくて我儘なところもひっくるめて、俺はタケシ先生のことが好きですから。しっかり支えます!」  とても難しい問題なのかもしれない。それでもできることをしてやりたいと思ったし、恋人の俺が支えなくて誰が支えるんだという気持ちで、御堂に答えてやった。 「やっぱり、周防が選んだだけのことはあるんだな。年下とか関係なく、アイツを任せられるって思った」  ベッドから腰を上げるなり、右手を差し出してきた。 「王領寺くん、周防を頼んだよ。腕のいい医者を、これ以上失うわけにはいかないからさ」  屈託のない笑顔で微笑みかけられたお蔭で、御堂の差し出した右手を素直に握りしめることができた。  落ち込んでしまったタケシ先生を助けるために、こっそりと同盟を結んだ瞬間だった。

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