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進撃(いや喜劇…いやいや悲劇!?)の学会16
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とても眠れる状態じゃなかった。
ツインの部屋で御堂先輩と一緒に泊まることに関して、歩の厳しい監視の目があるため、身の安全は保障されていた。
「タケシ先生、いろいろあって疲れてるだろ? 俺はそこにある椅子で寝るから、気にしなくていいからさ」
いつものおちゃらけた笑顔でベッドを進呈してくれた恋人には悪いけど、医者としての自分の駄目さ加減を再認識させられたせいで、身体は寝たがっているのに、頭が妙に冴えたままだった。
現在は、宿泊しているフロアの一番奥まったところにある非常口を背に、横にある窓から見える景色をぼんやりしながら眺めている。ひとりにしてくれと歩に頼んでいたこともあり、今日の出来事を反芻するには楽だった。
『ハハッ……。残念なが、ら片想い、なんだ。永遠に叶うこと、のないもの……さ』
刺された患者の言葉を聞いてから、ちょっと前まで片想いしていた自分を重ねてしまった。本来ならそんなことを気にせずに、手早く応急処置を施さなければならないというのにだ。
『見目麗し、い君でも、片想いをするもの、なのか』
どんなに自分の見た目が良くたって、片想いする相手の好みじゃなけりゃ意味がない。そのことを伝えかけて、言うのをやめた。言ったところで、その恋はもう終わっているのだから。
『だったら俺の気持ち、が分かるだ、ろ? 最期の望みを聞いては……くれ、ないか。少しでも彼の存在を感じなが、ら死にたぃんだっ』
自分が医者じゃなくただの通行人だったなら、患者の望みをきいていたかもしれない。いや、素直に聞いていたと思う。
見るからに瀕死の重傷に見える患者の願いを叶えてあげなければと、何もせずにそのまま見過ごしていただろう。好きな人の存在を傍に感じながら死ねるなら、俺だって死にたいと思う。
「だけど俺は医者なんだ。どんな患者でも、助けなきゃいけない立場なんだ……」
静まり返ったフロアに、低い声が響いた。言い聞かせるようなそれは、呪文のように自分の耳に返ってきた。
『お前、自分の心の弱さを、こんなタイミングで晒してる場合じゃないだろ。素人が見ても、危ない状態だっていうのが分かるだろ?』
ズシリと胸にのしかかった御堂先輩のセリフは、俺のいいわけを簡単に封じるものだった。それだけじゃなく――。
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