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Love too late:遅すぎた恋心3

***  待ち合わせした居酒屋で、無事に桃瀬と合流できた。テーブル席でにこやかに乾杯し、すぐさま話は桃瀬の恋バナになったんだけど。 「俺のどこがダメかなんて、言うまでもないんだけどさ。どうしてこうも、うまくいかないんだろ……」  酒に強くない愛しの同級生は、あっという間に呑まれて、いつもと同じグチを言い出す。会社の呑み会のたびにこんな状態だと、間違いなく同僚に嫌われるであろう。 「なぁ周防、聞いているのか?」 「聞いてる聞いてる。しっかり、最後まで聞いているからねー」 「先輩は、俺の体だけが目当てなんですねって言われてもさ。そうじゃないって否定したところで、全然信じてもらえなくて」  そしてまたこのパターンかよ。ちゃんと自分の気持ちを、相手に伝えてないから誤解を招くことになる。口下手というわけじゃないのに、どうも思っている気持ちを伝えるのが苦手な桃瀬。そういう不器用なところも俺からすると、結構かわいく思えるのに。  俺は冷たい生ビールを一口飲んで、小さなため息をついた。 「周防ってば、ちゃんと聞いているのか?」 「ももちん、しつこい男は嫌われる元だよ。しかも何度、同じ過ちを繰り返しているのやら」  憐れな桃瀬の頭を、優しく撫でてやる。 「……周防みたいに、俺のことをわかってくれるヤツ、いつか現れるんだろうか」 「さぁ、どうだろうねぇ――」  酒で真っ赤になっている顔を、微笑みを浮かべてじっと見つめた。  桃瀬の恋人なんて現れてほしくない、俺の傍にずっといてほしい。そんな想いを隠すための笑みを、桃瀬はどんな気持ちで見ているのだろう。 「おまえに出逢えて、本当に良かったって思う。じゃなきゃ、この痛みに耐えられなかった」 「よく言うよ……」  俺たちの出逢いが、必然だったとでもいうのだろうか? それが好きな相手の失恋話を笑いながら聞くなんていう、ドMな作業をするためだったなんてことないよな。  なにかをぶつぶつ呟いてテーブルに突っ伏した桃瀬を、恨めしげに眺めてから、よっこらせと背負う。これもいつも通り。  愛しい人を背負って、その重さを噛みしめながら、ゆっくりと帰路にたどり着いた。

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