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Love too late:押し付けられるキモチ
その日の夜は、計画通りに薬を手渡し見事、早々と就寝させることに成功した。
しかし、早く寝かしつけたせいだろか。安心しきって寝ていたベッドの中で、妙な違和感を感じ、ふっと目が覚めてしまった――背後に人の気配がする。
そのぬくもりをじわじわと背中に感じて、たらりと冷や汗が流れた。しかも寝息まで聞こえる、距離にいるって一体……
首を少しだけ動かし、恐るおそる背後を窺うと、予想通り太郎がいて。俺の肩口に頬を寄せているだけじゃなく、すごく幸せそうな顔して、すやすやと寝ているではないか!
(――いつの間に……)
俺の貴重なサンデーモーニングが、ぜーんぶ台無しじゃないか、この野郎!
くっついている身体を、素早く引き離そうとした瞬間、
「わんっ!」
目を閉じてる状態で口元に笑みを浮かべ、耳元で煩く犬のように鳴いた。
「起きていたのか……さっさと出て行ってくれ。俺の休暇である日曜を、わざわざ奪い取ってくれるな!」
「散歩に連れて行ってよタケシ先生。朝の新鮮な空気は、すっげー気持ちいいんだぜ」
散歩って――マジで犬化しているのかコイツ。
「散歩なら、ひとりで行って来い。俺はまだ寝ていたい」
「分かった。ひとりで行って来るけど途中で発作起きたら、死ぬかもな俺」
その言葉に、奥歯をぎゅっと噛みしめる。面倒くさい犬を拾ってしまった――って、ちょっと待て。冷静になれ俺。一緒に寝ていたことに、気をとられすぎていた。
「危うく散歩を許したが、お前は安静にしなきゃならないんだった。故に外に出るの、絶対に禁止な」
「はい、そーですかと言うことを聞く、素直で賢い犬じゃないんでね。勝手に行かせてもらいますよ」
止める俺の手から逃れるべく、ぱっと身を翻し、飛び出すように寝室を出て行った太郎。
「こらっ、待ちやがれ!!」
どうして朝から青筋立てて、これでもかと怒鳴り声を上げなきゃならないんだ。絶対に体に良くないぞ……
すたすた玄関に向かって歩く、太郎の首根っこをぎゅっと掴み、何とか強引に引き止めることに成功。
「わん♪」
ぜーぜー息を切らして見上げる俺に、くるりと顔だけ振り向いて、ニッコリと満面の笑みを浮かべる。
「早く着替えてきなよ。一緒に行こうぜ! タケシ先生に見せたいものがあるんだ」
……何で、一緒に行く設定になってんだよ。
「行かないってば」
「一緒に分かち合いたいんだって。アンタとさ」
突然表情を硬くし、強い口調で告げられたせいで、ぴきんと固まってしまった。
「後悔させないから、絶対に!」
らしくない言葉に、ため息をつき肩をすくめるしかない。
「分かったよ、まったく。面倒くさい――」
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