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Love too late:防戦6

(すっげぇ、恥ずかしい)  ――気がついたときには、号泣しちゃって涙が止まらなくて。年甲斐もなく、声をあげて泣いたら、意外とスッキリしたんだけれど……体を離すタイミングが掴めない!  落ち着け、俺。離れる順序を考えよう! まずは上半身を起こして椅子を反転させてから、くるりと背中を向ける。そうすればこの情けない泣き顔が、アイツには見られないだろう。  そしてさっと立ち上がってから白衣を脱ぎ、素早く二階に行って、何事もなかったように夕飯の支度をする。これなら太郎との接触が、極力防げるしな。 (よし、1.2ぃの3!)  太郎の身体にすがりついてた手を使い、上半身を素早く起こして、勢いよく椅子を反転させた。両手でごしごしと涙を拭い、すみやかに立ち上がる。 「もう大丈夫なのか?」 「ああ……」  自分が出した掠れた声が、更なる羞恥心をぶわっと煽った。自動的に、頬に熱を持つ始末。  ――何やってんだ、本当に……恥ずかしすぎて、顔をあげられない。 「肩、まだ震えてる。無理すんなよ」 「ち、違っ! これは――」  本当に違うんだ。恥ずかしさに耐えようとしたら変に力が入って、震えているだけで……  背中を向けたまま答える俺のことを、後ろからぎゅっと抱きしめてきた太郎。 「こら! 勝手に抱きつくなっ」  体に回された腕が腹の辺りだったので、腕がフリーに使える。思わず裏拳で太郎の顔の辺りを殴ったら、簡単にクリーンヒットした。 「あだっ!」 「図に乗るのも、いい加減にしろっ。バカ犬が!」  殴ったことにより、自由になった身でイライラしながら白衣を脱ぎ捨て、ばさっと乱暴に椅子にかける。  コイツのせいで、すべての計画が上手くいかない。非常にムカつく―― 「タケシ先生っ」 「あ?」 「いつも通りじゃん」  告げられた言葉にハッとする。  そういえば、いつの間に――何だかよく分からない内に、ムカつきすぎてしまったお陰で、元に戻っていた。 「いつもと違うのは、綺麗な顔が台無しになるくらい、まぶたが腫れてるってことだな」  コイツ、気にしてることを、よくもまぁズケズケと言ってくれるのな。  かくて俺は太郎に右ストレートを食らわせ、苛立ちを表しながら二階に上がった。だけど威力を半減してやることは、きちんと忘れていない。いつもの自分を取り戻してくれた、俺からの礼だ。

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