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Love too late:防戦7

***  太郎と夕飯を食べながら世間話をしていたら、朝焼けを見に行った高台の話となり、夜景はどんな感じなのかという流れになったので、わざわざ現地へ見に行くことになってしまった。 「大昔に彼女と来たときは、それはそれはいい感じだったんだろ? 周りは暗がりで、ムード満天だしさ」  へらっと笑いながら、辺りを見渡す太郎。人の過去をワザとらしい言葉で、ほじくり返しやがって。 「何でそう思う?」 「だって、見れば分かるだろ。周りはカップルだらけ。男同士は俺らだけだし」  煩い太郎を無視してため息をついたら、頬を優しく撫でるように、夜風がふわりと当たった。腫れてしまったまぶたに吹き抜ける風が、やけに気持ちよく感じる。 「朝焼けに負けないくらい、夜景も綺麗だな」 「ああ……」  ふたり並んで、崖下を望む夜景を楽しんだのだが―― 「でもタケシ先生の綺麗さには、やっぱ負けるわ」  馴れ馴れしく右頬に触ってきた手を、容赦なく叩き落とす。パシンという異質な音が、周りの目を引いてしまった。 「おっかねぇな。触るくらいいいじゃん、減るもんじゃないんだし」 「気安く触れるな!」 「涙に濡れるタケシ先生に、俺のこの大きな胸を、タダで貸してあげたっていうのに、この仕打ち。それって結構、酷くない?」 「うっ……」  しまった――悲惨な顔をどうしても見られたくなくて、自分のことばかり考えていたら、太郎に礼を言うのを、すっかり忘れていた。 「……その。さっきは、ありがとぅ」  腕を組んでそっぽを向き、たどたどしく言い放つ。恥ずかしさで、語尾が小さくなっただけじゃなく、今更過ぎる自分の失態で、頬にぶわっと赤みが差すのが分かる。  ――適度な暗がりで助かった。こんな顔していたら、コイツのことだ。絶対にツッコミ、入れるに違いない。 「まったく!」  そっぽを向いた俺の頬をいきなり、両手でそっと包んで、上向かせた太郎。 「なっ……!?」 (キスされる!?)  そう思って腕を振り払うべく、両手をかけたら―― 「……良かったな。まぶたの腫れ、少し引いたみたいで」 「は?」 「だけどその分、ほっぺたが腫れちゃった感じ? ほんのりと熱があるぜ」  可笑しそうに見つめられ、どうしていいか分からなくなり、固まってしまう自分。否定したいのに、上手く言葉が出てこない。 「そんなモノ欲しそうな顔してたら、タケシ先生をうっかり襲っちゃうけど?」

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