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Love too late:揺れる想い

※【ピロトークを聴きながら】(ピロトーク:揺れる想い)と一部内容がリンクしております。2sideでお楽しみくださいね。 *** (やっぱアイツには、太刀打ち出来ないのか……)  苛立ちが足音となって表れる。階段を上がる音が、えらく耳障りだった。  手に持っていたスケッチブックを、ポイッと投げるようにテーブルの上に放り出し、真っ直ぐキッチンに向かう。  冷蔵庫を乱暴に開け、お茶のペットボトルを取ろうと手を伸ばしたとき、それが目に入った。バカでかいタッパーに、メモのようなものが貼り付けられている。そこに書かれていたものは―― 『周防さんへ  いつもお世話になってます。郁也さんとふたりで餃子を作りました。これを食べて、スタミナを是非とも付けて下さい。涼一』  小さくてキレイな文字が、涼一って人の人柄を表している様だ。だってその下に書かれている雑な字は、明らかに別人だって分かるから。 『仕事頑張れよな、何かあったら相談に乗るし。桃』  ムダに大きい文字でメッセージを書いたため、自分の名前を書くスペースがなくなってしまい『桃』だけで終わってるのが、何だか笑えてしまう。  一見アンバランスなふたりに見えるけど、仲の良さそうな感じが、このメモから伝わってきた。きっと、ワイワイ言いながら書いたんだろう。 「せっかく小さい字できちんと書いてやったのに、どうしてそのスペースに、大きい字で書くかな……みたいな」  これを読んだらタケシ先生、苦笑いするしかない。現に読んだ自分の胸が、無性にシクシクと痛んでいるのだから。きっとタケシ先生も、同じような痛みを味わうに違いない――  きゅっと下唇を噛みしめ、何も手に取らず、肩を落して冷蔵庫を閉める。  俺なりにタケシ先生が喜んでくれることをしようと、いろいろ頑張ってきた。看護師さん達と仲良くなって仕事を手伝ったり、子どもたちと仲良くなるべく、絵を描いてあげたり。  なのに―― 「アイツには声をかけたクセして、俺は完全スルーだもんな。そんなの、マジで酷すぎる……」  ――認めてほしい、少しでもいいから、好きになってもらいたい。俺だけに微笑んでほしいんだ。 「その美貌で魅了するだけ魅了して、タケシ先生って雪女ならぬ雪男か!?」  着ている白衣が、どこかそんな風に思わせる。  あの人の凍てついた心を俺が何とかしたい。振り向かせてみたい! 「無謀な挑戦だけど、やってみるか……」  本当は治療を受けることが一番喜ばれるだろうけど、タケシ先生と恋がしたいから。  ――真実の恋がしてみたいから―― 「簡単に、諦めるワケにはいかないんだ!」  言いながら決意も新たに、再び冷蔵庫を勢いよく開けた。

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