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Love too late:揺れる想い6

***  窓に雨が当たる音で、ふと目が覚める。ぼんやりとしながら目の前を見てみると、いつもは背を向けて寝ているタケシ先生が、あどけない顔で俺の方を向いて寝ていた。  間近で顔を拝めるのはあり難いけど、俺の好きな泣きボクロが、枕でしっかりと隠れて見られないのは、えらく残念だ。  寝乱れている髪を整えるようにそっと撫でてやると、気持ちよさそうな顔をしてくれる。 「ホントはもっとべったりしたいけど、それすると、すっげぇ怒るもんなぁ。起きない今のうちに、ベタベタ触っちまえ」  タケシ先生の柔らかくて、しなやかな茶色い髪を梳くように撫でているだけで、もう超絶幸せ。幸せはそれだけでなく、念願だったHも出来たし―― 「イかせようとしてイかされちゃった俺って、ホントかなり情けないよな」  初めてで辛いだろうからと、ゆっくり中をかき混ぜるように責めていたら突然、自ら腰を激しく動かしてきて、すっげぇギョッとした。そして泣きボクロを、滲んできた涙で濡らしながら言ってくれたんだ。 『太郎……太郎っ、お前が好きだ……俺の横で、ずっと笑って……いてほしい』  それ聞いた瞬間、嬉しすぎてつい先にイってしまったけれど、満足感とか充実感で満たされた体を使って、何とかタケシ先生をイかせてから、ぎゅっと抱きしめ合った。 「……俺も、タケシ先生の横で笑っていたいよ。アンタに怒られながら、バカにされて笑われながら、それでも一緒にいられたら、それだけで――」  心の底から愛しいと思えるこの人の傍に、ずっといられるだけで―― 「生きたい、生きなきゃならない……」  タケシ先生は医者だから、俺を生かそうとウソをついて、自分の体をエサにしたのかもしれない。それでもすっげえ嬉しかった。アンタが言ってくれた言葉が、じわりと胸に沁みこんだよ。  俺はずっと罪を重ねるように愛の言葉と言いながら、偽りの言葉をいろんなヤツに囁いていた。だけどそれは――この人のために、真実の愛の言葉を告げるためだったのかもしれない。そう思うだけで胸が絞られるように、キリキリと痛くなる。 「タケシ先生、すっげぇ愛してる。今までありがと……」  ――今度はちゃんと、起きてるときに言ってやりたい。 「ワガママ言って、いろいろ無理させて、ごめんなさ、ぃ……」  謝った言葉が泣き声に変わり、掠れながら途切れてしまう。  ずっと梳いていた髪が、何故か一筋だけ指に絡みついた。まるで行くなと、言ってるみたいに思えてしまう。タケシ先生の意思のように、感じてしまうじゃないか。  奥歯を噛みしめて、それをさっさと素早く梳いてから、寝ている唇にそっと唇を重ねた。 「おやすみ――」  さよならは言わない! 病気を治して、きっとタケシ先生のもとに戻ってくるから。  窓を打ちつけていた雨がいつしか止んで、月明かりが部屋の中を明るく照らした。明るく照らしている光が、タケシ先生の頬に落してしまった俺の涙を、淡く照らしているのに目が留まる。唇を噛みしめ優しく拭ってから、寝室をあとにした。

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