72 / 126
はじめてのクリスマス周防目線
――おいおい、一体何を考えてこんなの、プレゼントしてくれたんだ――
クリスマスイブだろうが、盆暮れ正月だろうが、平日なら関係なく、病院を開けていた本日。
無事にいつもの時間に、ベテラン看護師の村上さんが後片付けをしてくれた上に、美味しそうなご馳走を、わざわざテーブルにセットしてから帰ってくれた。
小さなクリスマスケーキを前にして、ちょっとだけ緊張した顔の太郎が、いそいそとプレゼントを差し出してきたのだ。
それを受け取ってから、傍に立てかけておいた大きな包みを引っ張って、ほらよと手渡してやる。
「何が入ってるのかな、うひひひ……」
なぁんて言いながら、サル顔をデレデレさせて、渡してやった包みを、いそいそと開ける姿に、自然と笑みが浮かんでしまった。
「わっ、超カッコイイ!! ありがとタケシ先生」
俺の好きなブランド物を一緒に着てみたいと言って、デートしに行った店の洋服。このときは、自分の小遣いで買うと言い張った結果、ラフなシャツしか買えなかった太郎に、そのシャツに似合いそうなコーデを考え、ジャケットとパンツを、クリスマスのプレゼントにしてみたのだ。
色違いのお揃いを買ったなんて、口が裂けても言えない――
目の前で喜んで、ジャケットを着込んでくれる姿に、嬉しくなって笑みを浮かべた。俯いてそれを隠すと、膝に置いてある、太郎からのプレゼントが目に入る。
(俺も開けてやり、有り難うを言わなければな――)
リボンがお洒落に巻いてある箱に手をかけて、紐解いてから、ゆっくりと蓋を開けてみた。
その中には、ハガキ大くらいの紙の中に、俺と患者さんの笑顔が、水彩タッチで、ほのぼのと描かれているイラストがあって……
胸の中が、きゅっと鳴った。太郎の……いや、歩の目に映る俺って、こんな顔してるんだ。
どんな顔していいか分からず、上目遣いで、目の前の恋人を見たら、
"p(-x-〃) イジイジ
なぁんて、ちょっといじけたサル顔を見せた。
きっと俺が何も言わないものだから、気に入らないとでも、思ったのだろう。相変わらず、面倒くさいヤツ――
「よく描けてるじゃないか。嬉しいよ歩」
俺にしたら、褒めてやった言葉だというのに、まだ物足りなそうな表情を浮かべる。
ワケが分からず眉根を寄せたら、視線を逸らしながら、
「プレゼント、その絵だけじゃないから。箱の中にある厚紙を除けると、もうひとつのプレゼントが出てくる……」
歯切れの悪そうな感じで教えてくれたことに、イヤな予感がしまくった。隠し事をしたときに限って、こういう態度をとるからな。
とりあえず呼吸を整えてから、厚紙を横に除けて、白い洋服みたいなものを、目の前に広げてみた。
パッと見、ただの白衣だと思ったのに――
「何だ、コリャ(・ ̄□||||!!」
驚くのも無理はない。だって背中にキュートな羽のついた、超ミニ丈のナース服だったのだから!
「えっとぉ、白衣の似合うタケシ先生なら、ナース服もアリかなと思って」
太郎の言葉に、思いっきり顔を引きつらせるしかない。何を考えてるんだ、コイツは――
額に手をやり呆れ返ったときに、スマホがLINEの通知を知らせるべく、着信音が鳴った。
相手は、涼一くん。向こうも桃瀬から、サンタのミニスカコスチュームをプレゼントされ、困っているとのことだった。
(このやり取りは、【ピロトークを聴きながら】お題クリスマスにて掲載)
首謀者は誰だ――?
微妙すぎる空気が流れる中、鋭い視線で太郎を見ると――
・・・・・Σ( ̄⊥ ̄lll)明らかに困った顔をしている。
喜んでない姿を見て落ち込んだのか、はたまた、怒っている俺を恐れているのか。
「ね、それ着てみてよタケシ先生」
一度だけ俯いて、何か考えついたのか、俺を見つめながら、顔を真っ赤にさせつつ、ものすごいお願いをしてくれた。
だったら、そのものすごいお願い、叶えてやろうじゃないか!
「着てやってもいい。ただし、お前がまず、コレを着たらな」
椅子から立ち上がって、太郎の目の前に跪き、体にナース服をあてがってやる。
「なっ、何でだよ?」
大きめなサイズなんだろう、コイツでも着られそうだ(笑)
「何でって、決まってるでしょ。看護師志望のお前に、ピッタリじゃないか」
ナース服を押し付けるように手渡し、冷たく背中を向けた。
「お前が着ないなら、俺も着ない」
つか、恥ずかしすぎて死んじゃうレベルだからな。絶対に着られないだろ!
そう、思ったのに――
「……俺は着るよ、タケシ先生。アンタのナース服姿が拝めるなら、どんな服でも、着こなしてやる!」
エ━━━(;゚д゚)━━━・・
約3分後、ナースキャップを頭に付けて、ふとももを露わにした歩が、背中の羽を揺らしながら、大股開きで登場した。
自分が言ったことだけど、ソレを見ている方が、何倍もハズカシイ////
しかも似合わな過ぎる歩の姿に、ウッと口元を押さえてしまった。きっと俺が着ても、同じ状態になる……
「笑いたければ、思いっきり笑ってくれって。そんな、ガマンしなくていいからさ。桃瀬から聞いたんだけど、タケシ先生が高校のとき、セーラー服を着たんだって?」
「ウププッ……ああ、学祭の劇で、急遽代役したんだ。仕方なく、ね」
「すっげぇ可愛かったって、クラスの的だったそうじゃないか。だからコレ着てもきっと、似合うと思ったんだ」
ああ、首謀者は予想通り、桃瀬だったのか。俺の黒歴史を、コイツに横流ししやがって!
「……分かった、着てやるよ。その代わり、食事が終わるまで、その格好でいろよ、楽しいから」
そんな注文をしてやり、この場は凌いだのだが。さてさて、仕方なくナース服を着た周防先生は、一体どうなるのでしょうね(・∀・)
太郎目線につづく←ムダに引っ張るクリスマス
ともだちにシェアしよう!