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第27話

「んっ……ふ、ぁ……っ」 頭の中がグラグラする。 最初からハイペースなキスは最初から熱くなっていた身体をもっと熱くさせて、なにも考えられなくさせる。 互いの舌が快楽を貪るように激しく絡みあって、唾液の交わる音が脳髄に響く。 何度も角度を変えて深く咥内を侵して、犯されて。 あの夜が俺のもとにやってくる。 いまは朝なのに。 外の明るさもどうでもいいくらい、俺はキスに夢中になってた。 重なった身体。 腰のあたりに当たる硬い感触。それは俺もだけど智紀さんのもで。 「っ……は……、んっ」 俺の背中に腕が回って背筋を撫でる。 それだけでさえおかしいくらいに身体が疼いてしかたない。 舌を吸い上げられ、甘噛みされ、背中に這う手と、もう片方ズボンの中へもぐりこんでくる手。 尻を撫でる手に背筋が震え、割れ目に指が潜り込もうとして思わず唇を離してしまった。 激しいキスだったこと表すように俺と智紀さんの間に銀糸がひく。 キスの最中は閉じてた目。 開けてしまえば明るい部屋の中だという当たり前のことを再認識して顔が熱くなる。 我にかえって羞恥に智紀さんから離れようとしたら首に回った腕に引き寄せられた。 「まだ、だめだよ」 足りない、と笑う声とともにまた唇が合わさる。 朝っぱらから、とか、明るいのに、とか、頭の中をぐるぐる回る。 でも結局引きずられる。 おかしいってわかってるけど、止まらなかった。 角度を何度も変えながらキスを深くしていって、舌だけじゃなく身体も隙間なく密着して、絡む。 キスしたままふたり横向きになって、智紀さんの手がベルトを緩める。 それに気づいてるのに抵抗できなかった。 どうかしてる。 変だって自分でもわかってる。 だけどどうしようもないくらいに滾ってしまってる自分の半身を諌める方法がわからない。 潜り込んでくる手を払いのけることもできなかった。 「ん……っ、ぁ……っ」 自分じゃない他人の手に触れられて身体がびくつく。 キスしていただけなのに自分の身体がどう反応してるかなんてわかりきってるし、キスの合間に見えた智紀さんの目が楽しげに潤んでいるのが見えて逃げるように目を閉じた。 「千裕」 下唇を甘噛みして囁く声が聞こえるけど、目を開いて目を合わせてしまったら恥ずかしさで死にそうで俯く。 本当に自分のバカさやヘタレさに呆れる。 「千裕」 可笑しそうに笑いながら俺の耳元で繰り返す声。 手はやわやわと俺のを包み込んで緩く上下してる。 「今日は素直だな。どーして?」 「……知りません……っ」 顔上げてよ、と言われても無理。 素直だなんて言われたら逃げたくなって、それを察知したらしい智紀さんにまた強く抱きしめられた。 「気持ちいい?」 ぬるぬるとした感触に半身から先走りが溢れまくってるのがわかる。 強弱をつけて上下してくる手の動きに、熱い吐息がこぼれ顔を伏せながら小さく頷いた。 智紀さんの胸元に頭を押し付けたような状態になっている俺の髪を智紀さんが撫でる。 「本当に今日は素直だな」 くすくすと笑う声に、より一層羞恥とらしくない自分に焦ってまた逃げようとした。 「それも可愛いけど」 「……っ」 鈴口を指先でひっかかれ腰がびくつく。 そして、そのまま俺は布団から畳へとはみ出した。 イコール俺のから智紀さんの手が離れた状態になって、俺の半身は空気にさらされ小さく脈打った。 「……え」 逃げようとしたけど、別に嫌だったわけじゃないし。 いや、でも。 「ちょっと待ってて」 なんて反応すればいいのかわからずに躊躇いながら一旦パンツごとズボンを引きあげた。 身体はせっかくの快感を逃してしまって疼いてしかたない。 智紀さんは一言そう言うと隣室に行ってしまった。 「可愛いちーくんに煽られちゃってそのまま食べちゃいそうだったけど」 乱れた浴衣のまますぐに何かを持って戻ってきた。 はい、と渡され反射的に受け取ってそれを見る。 二つの大きさの異なる薄いパッケージ。 一つは正方形で、もう一つは長方形。 一つは見覚えのあるもので、もう一つは―――。 「コンドーム……と、ローション……?」 「そ。ここ旅館だからねー。そういうの置いてるわけないしね。よかったよ、それだけでもあって」 「……そうなんですか?」 まるでたまたま持ってたっていう言い方につい訊き返してた。 「なにが?」 「……いや……智紀さんいつも常備してそうだし」 「ああ、こういうの? ま、いつなにがあってもいいように持ってたりはするけど」 俺えらいでしょ、と発言に対して合わない爽やかな笑顔を浮かべてる。 「それ自慢するところですか」 「えー、だって人生なにが起こるかわかんないしさ。だってほら実際こうやって」 布団に座り、智紀さんが俺の手を引っ張って、俺は流されるように布団の上にあおむけにさせられた。 そして智紀さんが跨って、 「必要な時に使える」 俺が布団に落としたゴムを手にしてひらひらと振りながら目を細めた。 「……でも」 「んー?」 今度はその手が俺のズボンのベルトにかかってベルトを外して、前をくつろがせてく。 「今日は最初っから……使うつもりだったんなら……」 別に"たまたま"持ってたわけじゃないだろうし。 俺の言葉に智紀さんは不思議そうに目をしばたたかせて喉を鳴らした。 「なんかちーくん、誤解してない?」 「……なにを、ですか」 「その言い方だとまるで俺がちーくんとこういうことを最初からするつもりだったって言ってるように聞こえる」

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