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第31話
後孔に指なんか比べ物にならない硬く太いものが挿入されてる。
息がつまるような圧迫感に必死で空気を吸い込むけど、やっぱり苦しい。
「力抜いてるんだよ」
あやすように尻を撫でながら、ゆっくりゆっくり智紀さんは挿送を繰り返す。
力抜いても違和感はあるし、苦しいのにはかわりない。
だけど、
「っ、んっ、ぁ……っ」
さっきまでとは違って俺の半身は挿送のリズムとあわせるように扱かれて、そして前立腺を押しつぶすように擦られ続けてる。
苦しさと混じる快感。
異物感は確かにあるのに突かれるたびに身体が跳ねて、呻きなのか何かわからない声が勝手に出てしまう。
「気持ちいい? ちーくん」
ぐっと腰を押し付けられ、智紀さんが俺の腕をつかむ。
そのまま片手を後ろに引っ張られて上半身を起き上がらせられた。
掴まれてない片手で身体を支えるけど、いきなり律動のスピードが上がって力が抜けそうになる。
「とも……きさん……っ、くるし……っ」
「気持ちいい、だろ?」
不安定な態勢のまま後ろを見て首を振る。
少し見えた智紀さんが笑って俺の半身から手を離すともう片方の手も掴んできた。
「っ、わ……ッ、あっ」
ぐいっと強引に後ろから引っ張られて、
「ひ……ッ、んっ」
智紀さんの上に座らせられた。
背面座位の態勢で体重がかかったせいで、さっき以上に深く智紀さんのが俺の中に突き刺さる。
身体を強張らせ荒い呼吸を吐きだすと後ろから抱きしめられる。
「ごめんね、苦しかった? なんか俺、徹夜したせいかちょっと一本ネジ飛んでるかも」
首筋に当たる智紀さんの熱い吐息と言葉。
その言葉の意味を理解するより早く下から突き上げられて、半身がまた扱かれはじめた。
「っ、んっあ、ッ……」
さんざん俺のことを焦らしたくせに、挿れてからは容赦がない。
肌のぶつかる音が響いて、身体を激しく揺さぶられる。
声を抑えることもできずに突かれるたびに息を荒げていると不意に口元を手で覆われた。
「千裕、声大きいよ……っ」
微かに掠れた声が耳元で囁く。
「そんな喘ぎまくってたら仲居さんに聞こえるかもしれないよ?」
言いながら耳に這う舌。
どうする聴かれてたら、と笑う声に息を飲んで声を殺した。
だけど唇を噛み締めても激しく突きあげられたらどうしても声がこぼれる。
俺の口を覆ったままの智紀さんの手が動いて、唇をなぞって指が咥内へと割りこもうと動く。
「……なーんて、冗談だよ。ここ離れだし平気だよ」
だからいっぱい喘ぎな。
と、
千裕こっち向いて。
と、
半身を強く擦られながら言われて、少し首を傾ければ唇を塞がれた。
苦しい態勢で咥内へと舌が入り込んで絡まってくる。
「ン……っ……ふ、……っぁ」
苦しい。
息もままならないくらいに貪られる。
苦しい。
のに、頭がくらくらするのは、それを越えて快感が支配してるからで。
思考回路なんてとっくに分断されて、されるままに刺激が脳髄まで走り抜けてく。
半身からは少し濁った先走りが智紀さんの手を濡らして、後孔のほうまで垂れてるのを感じた。
あの夜とは違う激しさ。
たぶん、俺もネジが一本飛んでしまってる。
苦しいことさえ、気持ちいいなんて―――どうかしてる。
肉のぶつかり合う音と唾液の混じり合う音が頭の中に響きまくって、またあっというまに吐射感がこみ上げてきていた。
「んっ、は……っ」
「またイキそう?」
唇が離れていき浅い呼吸を繰り返す俺の様子を見て下唇を甘噛みしてくる。
肯定のかわりに智紀さんにもたれかかると、
「じゃあ一緒にイク?」
と、鈴口に爪を立てられて身体が跳ねた。
羞恥なんて有耶無耶になってしまうくらいに頭が沸騰してしまったかのように熱くて、揺らされる身体が震えてしかたなくて、俺は素直に頷いてた。
笑う声、だけど掠れている。
密着した肌にお互い汗が滲んでいた。
「最後はやっぱ顔見ながらがいいよね」
「……ッ、うあ……っあ」
激しく下から一突きされたかと思うと、ずぶずぶと引き抜かれる。
ぱくりと後孔が開いている感覚。
最初あんなに苦しかったのに喪失感が激しくて無意識にまた腰を落とそうとしたら喉を鳴らす音が後ろから聞こえた。
「そんなに俺のが欲しい?」
背中を押され布団に寝かされる。
あおむけになった途端脚を抱えられてすぐに後孔にぬるりと濡れた硬いものが触れる。
あっさりと先端が抵抗なく入り込んでくる。
それだけでぞくりと刺激が背を這い腰のあたりが疼いた。
だけどそのままそこで智紀さんは動きを止めた。
「ね、千裕。言ってよ」
「……っ……なにを」
勝手に腰が揺れてしまう俺にいつもとは違う爽やかなんかじゃない、雄臭い笑みを浮かべ智紀さんは首を傾げる。
「おねだりってやつ」
「……」
いつもなら俺だって、ばかじゃないのかとか、言えるわけないだろ、って思う。
でもいまはどうすればいいのかって、なんて言えばいいのかって、考えてしまう。
「千裕、俺早く突っ込みたいんだけど」
じゃあ早く突っ込めよ。
言いたけど言っても無駄だってことは意地悪そうな顔を見れば一目瞭然。
眉間にしわがよるのと同時に顔が熱くなるのも感じた。
「……俺も…………です」
「え? なに?」
「……」
確かに小声だったけど、聞こえてんだろ!
つい睨んでしまうと、笑いながら智紀さんは俺の半身をつかみ上下に扱きだした。
「……っ、ぁ」
吐射感が競りあがり、だけど物足りない刺激に身体が疼く。
いや、後孔がひくついてんのがわかる。
足りない。
「……ほしいです」
じっと俺を絡め取るように見つめる眼差しに耐え、必死に言葉を探す。
結局、智紀さんと同じように単純なストレートな言葉しか見つからないけど。
「突っ込んで……ほしい」
イキたい、と最後は小声になった。
まだ焦らされたらどうしようかと心配だったけど、俺のを握りこんだまま智紀さんは俺の右耳の横に手をつくと腰を押し付けてきた。
深く、満たされる。
「よくできました」
汗が俺の頬に落ちてくる。
俺を侵す男の顔を見上げれば、妖艶な笑みが落されていて目を奪われた。
開始された律動に身体の芯が痺れるような感覚を味わいながら傍らにある智紀さんの手をつかんだ。
一瞬目を眇めた智紀さんはすぐに俺がなにを言いたいのかわかったようで、口角を上げ俺の顔に影を落とした。
「ん……っ……ぁ」
この人と会って知ったことがたくさんある。
俺って結構キスが好きなのかもしれない。
……もしかしたら、この人のキスが―――かもしれないけど。
「千……裕」
キスの合間に響く低い声。
からかいも余裕もなにもない声に煽られ、俺もリズムに合わせるように腰を揺らし、舌も身体も絡めあわせて昇りつめる。
「ッ……ぁ……っは……ッ!!」
肌がぶつかり合う音が激しさを増していって射精感とは違う快楽の波に身体が大きく痙攣した。
びくびくと身体も後孔も震え、智紀さんのを締め付けて熱い脈動を感じた。
「……っく……」
呻く智紀さんの声と膨張するその半身。
ゴム越しに熱が吐き出される感覚と、合わせるように俺の半身も吐精を促すように擦られ、数瞬の間をおいて俺も白濁を吐きだした。
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