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 —— 想う心と○○な味の……(24)

 ランチタイムが終わった頃に、休憩に入らせてもらい、スタッフルームで紙パックの苺ジュースを一人で飲んでいると、池田さんが入ってきた。 「お、ここにいたか。 休憩に入ってるって訊いて、探してたんだ」  言いながら、小さめのスケッチブックを広げる池田さん。  なんだろうと、覗いてみると、そこには美味しそうなスイーツが色鉛筆で描かれていた。  スイーツの横には、どんな材料を使うとかを細かく書き込んでいる。 「うわっ、すごい! これ池田さんが描いたんですか?」 「あはは、そうだよ。 イメージしたものをこうして描いておくと忘れないしね」  そう言って、池田さんは描かれている絵を指さした。 「これ、さっき話していたハート型のシュークリームなんだけど……」  池田さんの描いたハート型のチョコシューは、ココアを混ぜたクッキーシューに、中はたっぷりのチョコクリームと苺と、デコレーション用のストライプの巻きチョコ。 「大人っぽいですね、これ」  シックな色合いが、透さんぽいかも……。 「直的にはどう? 大人っぽ過ぎる?恋人にあげるんでしょ?」 「え?! あ、恋人?! いやまだ恋人じゃ…… でも、本当に大人だから、大人っぽ過ぎるってことはないです」  『恋人』 って言葉にテンパる俺に、池田さんは目を丸くして驚いてる。 「えっ、直の彼女って、年上なの? しかも大人って…… 何歳年上?」  うわっ、大人ってとこに食いつかれてしまった! 「え? えーと、10歳くらい…… かな」 「まじっ? ええ? ちょっと、その人独身だろうね?」  うわっ、しまった! また正直過ぎる事を言ってしまった。 「ど、独身ですよ!」  慌てて言ったけど、池田さんの顔はもう興味津々で、シュークリームの事なんて頭から離れてるようだ。 「そうなの? いやまぁ、恋愛に歳は関係ないよ。 うん…… しかし…… なんかその話、興味あるなぁ。 どんな人なの?」 「…… どんなって…… 綺麗な人で…… 大人で、この色合いにイメージぴったりって感じで…… って、何言わせるんですか! もうこれ以上は言わないですよ! ほら、だからシュークリーム! 」  もっと訊きたそうな池田さんの質問攻めを避けるように、俺は話を進めるように促した。  池田さんは、「へー、このイメージがぴったりな人なんだー」とか言いながら、それでも今後のスケジュールを確認していく。 「もうあんまり日にちがないから、今夜店が終わったら俺ちょっと試しに作ってみるよ。 それを明日直に食べてもらって……」 「え? 俺も今夜、残りましょうか?」  池田さんが残るなら、俺もやらないとって思う。 「今夜はいいよ、バイト通しで入って、その上終わってからもなんて、駄目だよ。 病み上がりだしね」  取り敢えず、明日試作品を俺とオーナーシェフの相田さんも食べてみて、いけそうなら少量作って店に出してみる事にした。 「生ものだから、13日と14日渡しの予約を受け付ける事にしよう」  13日と14日は、予約分と店に出す分を作る為、早朝から出勤する事になった。 「明日からは、直にも厨房に入ってもらうよ。 作り方教えないと手伝ってもらえないしね」 「はい。よろしくお願いします」  足手まといにならないかなって言う不安と、美味しいチョコシューが出来たら、透さんに持っていけるっていう楽しみも、胸の中で混ざり合って、なんだか気持ちが高揚していた。  透さんが喜んでくれたらいいな。

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