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—— 想う心と○○な味の……(26)
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そして今日は、いよいよ14日バレンタインデー。
もちろん今日も朝からバイト。
ハート型チョコクッキーシューの売れ行きも好調で、予約分の準備も完璧。
練習の成果もあって、プレートの文字入れも結構いい感じにできるようになった…… と、思ってる。
今日の店出し分の準備も終えて、今、俺は透さんに渡す分のクッキーシューを作っているところ。
こればかりは、生地の成型も、クリームも、文字入れも、全部自分でやり遂げたい。
チョコと粉まみれになりながら、覚えたレシピを正確に順序良くこなしていく。
最後に、プレートに透さんへのメッセージを、書くんだけど…。
「うーーーん……、なんて書こう……」
暫く厨房で頭を抱えてると、後頭部辺りに視線が刺さっているのを感じて、後ろを振り向けば、相田さんと池田さんがニヤニヤしながら俺の事を見ていた。
「な、なんですかっ?」
「いや~~、直がそれに なんて書くのかなーって、な?」
「ねー」
大人の男二人が、顔を見合わせて「ねー!」とか言ってるよ!
「ちょ……、見ないでくださいよ。 恥ずかしいから!」
「えー、いいじゃん、ね、なんて書くのー?」
もーーーっ! なんなんだー! この人達っ。
「いいもん、もうオーソドックスなのでいくからっ」
つか、プレートに書くのって、それでなくても緊張するのに、見られてたら余計に緊張して指が震えるっつーの!
一度息を吐き出して、気持ちを落ち着かせる。
後ろの二人が、固唾を呑んで見守ってるのを感じるけど、無視無視!
目の前のプレートとガナッシュを入れた小さい紙の絞り袋の先に、神経を集中させた。
「できたー!」
なんとか失敗せずに、文字入れクリア。
「ほぉ~~」
「ほー、ほー、なるほどオーソドックスだね」
「もー、うるさいー二人共!」
まだ、何だかんだと冷やかしてくる二人を無視して、出来上がったクッキーシューの中で、一番形の綺麗なのにプレートを飾って、箱に詰めてラッピングする。
今日は5時であがらせてもらえるから、それまで冷蔵庫に入れておく。 これでよし!
「これ、残ったシューも、俺が買いますから」
素人の俺が作ったシュークリームなんて、とてもじゃないけど店には出せないから。
「いや、もうこれ店に出しても大丈夫な出来だよ。 直、上手くなったな」
池田さんにそう言われると、めちゃめちゃ嬉しいけど……。
「え、いいのかな…、俺が作ったのに…。」
「まぁ、材料の分量とかは決まってるし、生地の成型も上手く出来てるし、焼き上がりも文句ない。 店に出すよこれ」
—— なんか、マジ嬉しい。
生まれて初めて、充実感っていうものを味わった気がした。
プレートに書いた言葉は、ごくありふれたもの。
—— I'm in love with you.
でもそれが、一番正直な気持ちだから……。
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