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 —— 想う心と○○な味の……(26)

 *****  そして今日は、いよいよ14日バレンタインデー。  もちろん今日も朝からバイト。  ハート型チョコクッキーシューの売れ行きも好調で、予約分の準備も完璧。  練習の成果もあって、プレートの文字入れも結構いい感じにできるようになった…… と、思ってる。  今日の店出し分の準備も終えて、今、俺は透さんに渡す分のクッキーシューを作っているところ。  こればかりは、生地の成型も、クリームも、文字入れも、全部自分でやり遂げたい。  チョコと粉まみれになりながら、覚えたレシピを正確に順序良くこなしていく。  最後に、プレートに透さんへのメッセージを、書くんだけど…。 「うーーーん……、なんて書こう……」  暫く厨房で頭を抱えてると、後頭部辺りに視線が刺さっているのを感じて、後ろを振り向けば、相田さんと池田さんがニヤニヤしながら俺の事を見ていた。 「な、なんですかっ?」 「いや~~、直がそれに なんて書くのかなーって、な?」 「ねー」  大人の男二人が、顔を見合わせて「ねー!」とか言ってるよ! 「ちょ……、見ないでくださいよ。 恥ずかしいから!」 「えー、いいじゃん、ね、なんて書くのー?」  もーーーっ! なんなんだー! この人達っ。 「いいもん、もうオーソドックスなのでいくからっ」  つか、プレートに書くのって、それでなくても緊張するのに、見られてたら余計に緊張して指が震えるっつーの!  一度息を吐き出して、気持ちを落ち着かせる。  後ろの二人が、固唾を呑んで見守ってるのを感じるけど、無視無視!  目の前のプレートとガナッシュを入れた小さい紙の絞り袋の先に、神経を集中させた。 「できたー!」  なんとか失敗せずに、文字入れクリア。 「ほぉ~~」 「ほー、ほー、なるほどオーソドックスだね」 「もー、うるさいー二人共!」  まだ、何だかんだと冷やかしてくる二人を無視して、出来上がったクッキーシューの中で、一番形の綺麗なのにプレートを飾って、箱に詰めてラッピングする。  今日は5時であがらせてもらえるから、それまで冷蔵庫に入れておく。 これでよし! 「これ、残ったシューも、俺が買いますから」  素人の俺が作ったシュークリームなんて、とてもじゃないけど店には出せないから。 「いや、もうこれ店に出しても大丈夫な出来だよ。 直、上手くなったな」  池田さんにそう言われると、めちゃめちゃ嬉しいけど……。 「え、いいのかな…、俺が作ったのに…。」 「まぁ、材料の分量とかは決まってるし、生地の成型も上手く出来てるし、焼き上がりも文句ない。 店に出すよこれ」  —— なんか、マジ嬉しい。  生まれて初めて、充実感っていうものを味わった気がした。  プレートに書いた言葉は、ごくありふれたもの。  —— I'm in love with you.  でもそれが、一番正直な気持ちだから……。

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