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 —— 想う心と○○な味の……(41)

「直、もう8時回ってる。 上がっていいぞ」 「はい、んじゃ、ここ片付けたら上がります」  お客様の帰った後のテーブルを拭きながら、俺は明日の予定を考えていた。  明日と明後日と、バイトに入っていなくて、予定も何も入れていない。  …… 大阪…… 観光でも行ってみるか……。 なんて考えて、自分でも笑える。  みっきーの言う通り、あまり重く考えないで行ってみるのも悪くないかもしれない。 「あ、直、ちょっとおいで」  私服に着替えに行こうとしているところを、厨房から顔を出した、オーナーシェフの相田さんに呼び止められた。 「はい」  厨房に入って行くと、相田さんが冷蔵庫からラッピングされた箱を取り出して、俺のところに持ってくる。  隣にいる、池田さんがニコニコと笑ってるし、何だろ? と、思いながら、俺は相田さんを窺い見た。 「ハッピーバースデー直。 これやる」 「え? え?」  目の前に差し出されたラッピングされた箱と、相田さんの顔を交互に見て驚いている俺に、隣に立っている池田さんも、厨房にいる他のスタッフも、一旦作業する手を止めて、拍手してくれる。 「あ? あぁ…… 俺……」  そう言えば、今日は3月31日。 俺の19歳の誕生日だった。 「19歳おめでとう」 「うぁぁ……、なんか俺、自分の誕生日忘れてました。 すげ、嬉しいです。 ありがとうございます」  まさか祝ってもらえるなんて思ってなくて、嬉しくて顔中の筋肉が緩んでるのが自分でも分かる。  皆が口々に「おめでとう」と、言って、代わる代わる俺の頭を撫で回してクシャクシャにしてくれる。 「それ、誕生日祝いだけど、ケーキ…… じゃないよ」と、笑いながらラッピングした箱を指さす相田さん。 「え? なんだろう?」  箱の大きさは、そんなに大きくはない。 店でよく使っている箱の大きさと同じ。 「ま、プレゼントって言っても、実際は直が作ったんだけどね」 「あ……」  —— ハート型クッキーシューだ。  相田さんは、悪戯っぽく笑いながら、言葉を続ける。 「でもプレートには、池田くんが皆を代表して、メッセージを書いてくれたんだよ」 「うわーっ、マジで嬉しいです! ありがとうございます」  スタッフの、しかもバイトになんか、今まで誕生日祝いなんてしたことなんて、一度も無かったのに。  ふと、そう思って見上げれば、俺の考えてることが分かったように、相田さんがにこっと微笑んた。 「10代最後の誕生日だしね。バレンタインの時は頑張ってくれたから、特別だよ。な、みんな!」    相田さんがそう言うと、その場にいたスタッフが、「そーそー!」と、言いながら、また拍手をしてくれる。  ありがとうございます。と、何度もお礼を言って回ると、またみんなが一人ずつ俺の頭をクシャクシャになるまで撫でてくれて……。  なんか、胸の中にすごく暖かいものが込み上げてきちゃった。 ***  店を出たのは、もう21時になる頃だった。  太陽が出てる時間なら暖かいけど、さすがに夜は風が冷たい。  シャツの上に、薄手の綿ニットのジャケットだけでは、少し肌寒くて肩を竦めた。  —— 十代最後か……。  二十歳になる頃には、もっと大人になれるのかな。  俺がもっと大人だったら、今も透さんと一緒にいられただろうか。  そんな事を考えながら、ポケットの中に手を入れると、昼間みっきーからもらったメモが指に当たって、カサリと音を立てた。 「明日…… 本当に大阪行ってみようかな……。 その前に透さんの会社に電話してみる方がいいのかな」  あれこれ迷いながら、透さんの優しい笑顔を思い出していた。

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