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 —— 想う心と○○な味の……(54)

 *** 「…… あ、もうこんな時間……」  サイドチェストの上に置かれた時計で、時間を確認しながら透さんが、ゆっくりと起き上がる。 「…え?」  身体を重ね合っていた温もりの余韻に、まだ浸っていたかった俺は、離れて行こうとする透さんの腕に思わず手を伸ばした。 「ほら、11時30分、直くんの誕生日が終わっちゃうよ」 「あ、ホントだ」  どれくらい、こうして抱き合って、くっついていたのかな。 「お腹空いたよね……」 「う…… ん、そう言えば……」  そう言えば、今日って夕飯食べてなかったな…… なんて、今更思い出していた。  なんだか胸がいっぱいで、忘れちゃってたけど、思い出すとお腹が減ってきたような気がする。 「ちょっと待ってて」  優しく微笑んで、俺の額にチュっと、キスを落として立ち上がると、さっき床に脱ぎ捨てたシャツだけ拾い上げて、羽織りながら部屋を出て行った。  何か食べるものでも、作りに行ったんだろうか…… と、出て行く後ろ姿を見送りながら、何か作るんなら手伝わなきゃ…… と、まだ甘い余韻の残る身体を無理やり起こす。  でももう少し、ベッドでまったりイチャイチャとか? したいなぁーなんて考えてる自分に気が付いて、苦笑する。 完全に顔が緩んでるよね。 「え…… っと、俺の服……、」  ベッドの上から、散らばった服を探していたら、ドアが開いて透さんが戻ってきて、部屋に入ってくる姿に、ついボーっと見惚れてしまった。  羽織っただけのシャツは釦をとめてなくて、隙間から見え隠れする綺麗に引き締まった身体が、壮絶に色っぽくて、俺はまた下半身に熱が集まるのを感じて俯いてしまう。  そんな俺に気付いたのか、透さんはクスクスと笑う。 「気になっちゃう?」と、訊かれて、 「べ、別に……」とか、応えながらも、顔がめちゃ熱くて視線を逸らした。 「ごめんね、でももう時間が無かったから……」  そう言って、クッキーシューの入った箱を俺の膝の上に置いてくれた。 「…… あ、」 「今日のうちに食べないとね? バースデーケーキかな?」 「ケーキじゃないんだ。 シュークリーム」 「へえー、そうなの?」  と、会話をしながら、透さんが俺の隣に腰掛ける。  直くん、早く開けてみてと促されて、俺は綺麗にラッピングされた箱のリボンに手をかけた。 「いっぱい運動したから、喉も乾いてるんじゃない?」  そう言って、手にしていたペットボトルを見せて、「飲む?」と、小首を傾げる。 「うん、飲む」  確かに喉が渇いてたから、水をグビグビ一気に飲みたい気分だった。  なのに、ラッピングを開けながら、蓋を開けてくれたペットボトルを受け取ろうと手を伸ばしたら……、  透さんは、俺に渡さずに自分で飲み始めた。 「…… あ……、」  伸ばした手は、行き場がなくなり、宙を彷徨う。  そんな俺を見て、透さんは悪戯っぽく口角を上げて、そのまま俺の後頭部に手を回して、唇を近づけて……、 「…… ん……」  重なった唇から、冷たい水が流し込まれた。  飲み込み切れなかった水が口端から少し零れて、顎を伝って首筋に流れ落ちる。  口に含んだ水を俺の咥内へ全部流し込んで、濡れた唇を手の甲で拭いながら「もっと飲む?」って訊かれて、「もっと、キスしたい」って、応えてしまった。 「キスは後でね。 先にバースデーシュー食べないと、日にち変わっちゃう」と、透さんは笑いながら箱を指さして、再び早く開けてと促す。 「透さんが、キスを仕掛けてきたんじゃん」って文句言うと、「水が飲みたいって言うから……」って、返されて……。  思わず、二人で顔を見合わせて笑った。

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