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 ―― Moonlight scandal(9)

「…… まぁなー、でも、ライバルは前より減ったんだぜ?」  5人居たライバルが、今は一人だけだそうだ。 「俺は昨日、デートしたからな。今日はアイツの番なわけ」  啓太は、嬉しそうに言ってるけど……。 「啓太は、ヤキモチとか妬かないの?」 「そりゃー、妬くさ」  啓太は、食べ終わったアイスの棒を、ダストボックスめがけてシュートする。  何も入っていなかったダストボックスの中で、アイスの棒がカラン…… と、音を立てた。  啓太は、ダストボックスから視線を外さずに、話を続ける。 「まぁ、簡単に言うと、好きになっちまったから、仕方ねぇんだよ」  啓太はそう言った後、一旦言葉を切って、照れたように頭を掻いた。 「もう一人いるライバルってのがまた、いい奴でさぁ、俺、負けそうなんだけど……、もしも、ゆりがそいつを選んだとしたら、それはそれで納得できると言うか……」  —— そんなの、納得できるもんなのか?! 俺なら無理だと思うけど……。 「啓太は、本当にそれでいいわけ? ゆり先輩が他の男のもんになっても?」 「ああ、いいよ。…… ゆりが自分で選んだなら。 あいつなら、安心して任せられるし」  —— 1番に願うのは、相手の幸せ…だろ?  そう言い切る啓太が、やけに男らしくて。 「ま、そうならないように、まだまだ頑張るけどね」  そう言って、啓太はさっきまでの男らしい表情を、少し崩して、にやりと笑う。 「そっか……」  なんだか、啓太なら、ゆり先輩もいつかは…… って気がしてくる。 「なーんか、啓太が大人に見えてきた……」  俺なんか、透さんが休みなのに仕事に行ってしまっただけで、モヤモヤしてんのに。 「なんだよ、急に」 「んーーー」  なんだか、そんな子供みたいなこと思ってんのを、啓太に話すのも恥ずかしい。 「ま、何か悩みがあるなら、お兄さんに相談してみ?」  啓太は、そう言いながら、まるで子供にするような手付きで、俺の頭を撫でる。 「なんだよ、兄貴面すんなよー」 「直が、俺のことを、大人だって、言ったんじゃん」 「—— おっ、俺だって、もう大人だし!」  そうだよ、俺だって分かってる……。 「なんだよ、言ってみろよ。 透さんが浮気でもしたか?」 「し、してねえよ!透さんが、そんな事するわけねーもん」 「じゃ、なんだよ?」 「だから……、ただ透さんの仕事が忙しくて……、今日も休みなのに、仕事に行っちゃって」  仕事だから仕方ないって、分かっているつもりなのに、我侭言っちゃって、困らせてしまった。  そんな自分が、すげー嫌だったことを、恥ずかしいけど啓太に全部話した。

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