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 —— Moonlight scandal(11)

 啓太に、俺のちっぽけな悩みを打ち明けてから、なんとなく感じていた胸の奥の小さな痛みもすっかり消えていて。  相変わらず平日は、透さんに会えないけど、毎日メールもしているし、電話で声も聞けている。  それだけで、結構幸せを感じているんだから、俺ってホント単純なんだろーなって思う。  それに…今週末は、透さんと一緒にプールに行けるし!  —— 透さん、どんな水着かなー。  スラリとした体型に、程よい筋肉が付いていて、競泳用の水着は似合うだろうなー、なんて想像しては頬が緩んでしまう。  今はバイトの休憩中で、スタッフルームで週末の楽しい予定を考えながら、遅い昼飯を食べていた。 「あ、そういえば俺って、競泳用とか持ってないんだけど、普通にサーフパンツとかでいいのかな」  フィットネスクラブなんて、行ったことないから、どんな水着でもいいのか心配になる。 「今夜にでも、透さんに電話した時に聞いてみよ」  と、独り言を呟いたところで、テーブルの上に置いていた携帯が、振動した。  開いてみると、透さんからの着信。  あまりのタイミングの良さにテンションが上がる。 「もしもし、透さん?!」  電話をかけてきた透さんよりも速く、俺が勢いよく話し出すと、電話の向こうで透さんの笑い声が聞こえてきた。 『――直くん、今日も元気がいいね。 何かいい事でもあった?』 「あ、ううん、ちょうど週末の事を考えてたら、携帯が鳴ったから嬉しくなっちゃって。」 『そうなんだ。休憩時間じゃないかなと思って、かけてみたんだけど、タイミングよかったね。』 「透さんは今、仕事中でしょ? 何か俺に急用でもあった?」  透さんが、仕事中に電話をかけてくるのは、珍しい。 『あ、うん。 こないだ言ってた、急ぎの仕事の目処がついて今日は早く帰れるから、一緒に夕飯でもと思ったんだけど』 「え? ホント? あ、俺はバイトが今日は4時までだから、先に透さんち行って、夕飯何か作るよ!」  最近の俺は、啓太や透さんに教えてもらったり、本なんかでも勉強したりして、料理も結構できるようになったと思う。 『ホント? いいの? 俺も7時くらいまでには、帰れると思うよ』 「うん、じゃあ俺、帰りに夕飯の材料買って、先に透さんちに行ってるから」  —— じゃ、あとでね。 って、約束をして、通話を切った。 「あ、水着の事を訊くの忘れてた」って、思い出したけど、…… また後でゆっくり会えるんだし、ま、いっか。  平日の夜に会えるのは珍しいし、夕飯食べてたら遅くなるし、きっと今夜は透さんちに泊まれる。  なんて、考えると嬉しくて、午後からのバイトの時間は、あっと言う間に過ぎていった。

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