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 ―― Moonlight scandal(15)

 振り向くと、透さんは眉間に皺を寄せ、心配そうな表情で、俺に視線を合わせる。 「透さん……、」 「ごめんね直くん、なんか…… こんな事になって」  確かにお母さんに言われた言葉に、胸がツクンと痛くなったけど、透さんのことを信じてるから、そんなに心配そうな顔をしないでほしい。  だから俺は、透さんが心配しないように、大丈夫だよと、笑ってみせた。  きっと上手く笑えたと思う。  透さんは、そんな俺から視線を外さずに、漆黒の瞳を細める。  次の瞬間、腕を引っ張られ外に出ると、後ろ手にドアを閉めた透さんに、そのまま抱きすくめられた。 「…… 透さん?」  ―― どうしたの? と、口に出すより速く、顎を掬い上げられて、唇が重なった。  舌が挿し込まれて、そのまま俺の咥内へ熱を送り込まれる。  背中に回った、透さんの手に力がこめられてきつく抱きしめられて、角度を変えて更に深くなるキスに、我慢できない声が漏れてしまう。 「…… ん、…… ふ…… ッ」  —— やばい、こんな玄関の外で、誰かに見られたら!  やっと唇が離れた時には、俺の息は上がっていて、俯き加減に、透さんの胸元辺りに視線を落として肩を上下させていた。 「直、顔をあげて……」  透さんの掌が俺の頬を包み、上を向かせてまた唇が重なる。 「ん…… っ、…… 駄目…… っ」  透さんの、胸に両手を当てて、肘を伸ばして突っ張ると、漸く唇を離してくれた。  それでも透さんは、背中を後ろのドアに預けて、俺の身体をギュっと抱きしめたまま。 「…… ごめん、あんまり直くんが可愛いから」  頭の上に、透さんの小さな苦笑いが落ちてきた。 「なんで? 俺のどこが可愛いの。 俺何もしてないじゃん」  いったいどこで、透さんのスイッチが入っちゃったのか不思議で、抱きしめられた腕の中から透さんを見上げた。 「俺に心配かけさせないように、気を遣ってくれたんでしょう?」  そう言って、柔らかく微笑んだ透さんの瞳と目が合うと、なんだか恥ずかしくて、俺はまた俯いてしまった。 「べ、別に気を遣った訳じゃないから」  ちょっとだけ、強がってみせると、透さんは、クスっと笑いながら、俺の髪を撫でてくれる。 「本当にごめんね。…… あの人に何か言われた?」 「…… 婚約の話、なくなってないって、言ってたけど……」  それは、今日一番に気になっていることだった。 「…… あの人が勝手に言ってることだから、気にしなくていいよ」  透さんが、そう言ってくれると、さっきまでの不安が嘘のように消えていく気がする。 「そのことも含めて、今夜もう一度、ちゃんと話し合いするよ」  透さんがそう言った瞬間、透さんの背後のドアを中からノックする音が聞こえた。 「透さん、何をしているの? 開けなさい」  部屋の中から聞こえてきた声に、透さんは凭れていた背中を離してドアを開けると、中から声の主が顔を出した。

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