197 / 351

 ―― Moonlight scandal(21)

 宴会場の扉は、人が出て行った後、閉め忘れたのか、開きっぱなしになっていて、中の様子が自然に見えている。  —— 結構盛大なパーティーみたいだな。  沢山の人が、立食パーティを楽しんでいる。  俺には、全く縁のなさそうなパーティの風景を、見るでもなく見ないでもなく、何となく視界の隅で捉えていた。  —— あれ? 透さん?  よく似た背格好に見えたけど、最初は人違いだと思った…… でも……、  少し奥まった所で、手にワインだか、シャンパンだかのグラスを持って談笑しているのは、確かに透さんだ。  —— 提携記念パーティって、ここだったのか……。  その時、此方からだと、透さんに隠れて見えなかった人影が動いて、その姿がちらりと見えた。  白い綺麗なシルエットのミニドレスを着た女の人。  —— 美絵さんだった。  このパーティに、美絵さんも出席しているのは当然て言えば、当然なんだけど。  やっぱり、こうやって二人が並んでいるのを見ると、胸の中がモヤモヤする。  見ているのが辛くて、思わず目を逸らしてしまう。  その時、俺の座っている横の、サイドテーブルを挟んだ隣のソファーに、パーティ会場から出てきた男二人が座って、話し始めるのが聞こえてくる。 「結構盛大だったな」 「そうだな。この後、婚約発表もするらしいね」 「へぇー、やっぱりそうなんだ」  —— え?…… 婚約発表? 「なんでも、社長が入院してるそうだけど、これで後継者もはっきり決まって、安心ってわけか」 「そうだな。 だけど、あの社長夫人も、いろいろやり手だよな」  話の内容は俺にはさっぱりだけど、でも……、透さんが出席しているこのパーティで、後継者っ言えば、あてはまるのは、やっぱり透さんしか俺には思いつかない。 しかも、婚約発表ってなったら……。 「あら? あなた、透さんの部屋にいた人よね?」  ぐるぐると、考えを巡らせていると、頭の上で誰かに声をかけられた。  顔を上げると、美絵さんが、うっすらと笑みを浮かべて、俺のことを見下ろしている。 「えーと、直くん、だっけ?」  俺を見下ろしているその顔は可愛いけど……、こないだ会った時とは、どこか違う感じで……。 「こんな所まで、透さんを追いかけてきたの?」  なんだかとても、意地悪そうに思えてしまう。  俺がやきもち焼いてるからかもしれないけど。 「あ、いえ、ここに来たのは偶然で……、母と下のラウンジのデザートブッフェを食べに来たんです」 「へぇー、偶然ね……」  そう言いながら、美絵さんは俺の隣に腰掛けた。

ともだちにシェアしよう!