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—— Moonlight scandal(27)
駐車場を抜けて、病院の入り口までの短い並木道。
その木々の間に置いてあるベンチに、透さんと並んで腰掛けた。
「父は…… 婚約の事も後継ぎの事も、俺に無理強いはしたくない。 と、言ってくれたよ」
「え?」
少し驚いて、隣に座っている透さんを見上げると、透さんも、俺の方に視線を向けて、柔らかく微笑んだ。
「父との間には、ずっと確執があったけど……、父もその事で、ずっと苦しんでいたって、分かったんだ」
家の為、会社の為に、やりたい仕事も出来ず、好きな人を幸せにする事もできないのは、自分だけで十分だって。
会社は別に息子が継がないといけない決まりなんて、ないんだからと。
「だから、勘当した筈なのに、なんで戻ってきたんだって、言われた」
そう言って、透さんは満面の笑みを俺に向ける。
「それって……」
「勘当されちゃったから、しょうがないよね」
後継ぎの事も、婚約の事もね。 と言って、透さんは悪戯っぽく笑った。
「本当にそれでいいの? 勘当だなんて……」
勘当って言葉が、俺にはちょっと縁のない事過ぎて、ピンとこないって言うか……。
「直くんは、優しいね」
透さんは、そう言って、俺の頭を撫でて笑う。
「勘当って言っても、本当に父と縁が切れる分けじゃないよ」
離れていても、多分……、今までよりももっと、絆みたいなものを感じる事ができそうな気がするよ。
—— だからね……
そう言って、俺の頭を撫でていた手が、優しく頬を包んで、透さんは俺に視線を合わせる。
「父に紹介したいんだよ。 俺の大切な人を」
「たっ!? 大切なって…… !」
言われた言葉を、自分で声に出して言ってみると、恥ずかしさでカーッと顔が熱くなるんだけど!
—— な、何? なに言ってんの? それって何だか…… !!
結婚を前提にお付き合いしてます!みたいな? いや、それは女の人ならそうだけど、俺は男だし?
「直くん、俺は本気だよ。 本気で直くんとずっと一緒にいたいと思ってる」
透さんの目は真剣で、胸がトクンと震えたのと同時に、その意味の大きさに気が付いて、言葉が詰まってしまう。
俺も‥…、それは俺だって、ずっと透さんの隣にいたい。 でも……。
「お父さん、びっくりするんじゃないのかな……」
息子が婚約解消してまで、選んだ相手が男だったなんて……。
「大丈夫だよ、俺の好きなように生きろと言ったのは、父の方なんだし」
透さんは、そう言うけど、そんな上手くいくのかな……。
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