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—— Moonlight scandal(37)
裏門から、校舎の影に隠れながら、二人してプールまで走っていく。
塀の向こう側で時折、車のライトが通り過ぎるのが、煉瓦塀に等間隔ではめ込んでいる柵の隙間から見えている。
そうして辿り着いた、プールの入口。
プールの周りは、結構高いフェンスに囲まれて、その周りには、木々が植えられていて、今の状況には、丁度良い具合に目隠しになっている。
—— でも、この高いフェンスよじ登れるのかなぁ。
フェンスは結構柔らかいし、身体の重みに揺れそうだけど……。
何より、きっと音が派手に鳴りそうな気がする。
「直くん、こっち」
ドキドキしてる俺とは違って、透さんはなんだかとても大胆で冷静。
透さんがプールの入口の扉を片手で押すと、簡単に開いた。
「鍵、空いてたね」
そう言って、クスッと笑う。
「室内プールもあるけど、そっちは侵入したら防犯の警報音が鳴りそうだけどね」
外は手薄だから……、とか言いながら、透さんはスタスタと中に入って行く。
夜のプールはやっぱり暗くて、月の灯りと、時々外を走る車のライトと、街灯だけが頼り。
俺は透さんの後を、離れないように従いて行く。
薄暗いけど、少しずつ目が慣れてきた。
入ってすぐの所には、更衣室とかのある建物があって、その横にシャワースペース。
広めのプールサイドの一角の、休憩スペースのベンチの所で透さんは立ち止まって俺を振り返った。
「どう? プライベートプールは」
「プ、プライベートって!」
—— だけど、やっぱりマズイんじゃないだろうか。
もし見つかったら、それこそスキャンダルになるって!
ここんとこ、よく耳にした、スキャンダルって言葉で、俺の頭はいっぱいだった。
「直くんも、早く脱いで」
「とっ、透さん!」
そんな俺に、お構いなく、透さんはネクタイを解き、シャツのボタンを外していて……。
「あああ、何、脱いでんの?!」
慌てて止めようとすると、「だって、泳ぐ為に来たんでしょ?」と、言いながら、俺のシャツのボタンを外し始める。
ボタンを一つずつ外す、透さんの綺麗な指を眺めながら、俺は一瞬納得しかけた。
—— ああ、そうか、泳ぐんだもんな………、
…… って! ちがーーーうっ!
「ま、待って、待って! 透さん、だって水着は? 水着ないよ?」
「誰も見てないんだし、いらないんじゃないかな」
にっこり笑って、俺のシャツを脱がし終えると、自分のシャツも脱いで、ベンチの上に放り投げた。
俺に背中を向けたまま、透さんはスラックスと下着を一緒に脱いでいく。
「と、透さん……」
確かに誰も見てないよ。 …… 見てないけど!
けど……、
月の灯りの下で見る、全てを脱いだ透さんの引き締まった後ろ姿が、あまりにもキレイで。 俺は息を飲んで固まってしまう。
肩越しに振り返って、俺を見つめる漆黒の瞳が、艶っぽく光って見えて……、その瞳に誘われるように、気が付けば、俺も残りの着ている服を、全て脱ぎ捨てていた。
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