213 / 351

 —— Moonlight scandal(37)

 裏門から、校舎の影に隠れながら、二人してプールまで走っていく。  塀の向こう側で時折、車のライトが通り過ぎるのが、煉瓦塀に等間隔ではめ込んでいる柵の隙間から見えている。  そうして辿り着いた、プールの入口。  プールの周りは、結構高いフェンスに囲まれて、その周りには、木々が植えられていて、今の状況には、丁度良い具合に目隠しになっている。  —— でも、この高いフェンスよじ登れるのかなぁ。  フェンスは結構柔らかいし、身体の重みに揺れそうだけど……。  何より、きっと音が派手に鳴りそうな気がする。 「直くん、こっち」  ドキドキしてる俺とは違って、透さんはなんだかとても大胆で冷静。  透さんがプールの入口の扉を片手で押すと、簡単に開いた。 「鍵、空いてたね」  そう言って、クスッと笑う。 「室内プールもあるけど、そっちは侵入したら防犯の警報音が鳴りそうだけどね」  外は手薄だから……、とか言いながら、透さんはスタスタと中に入って行く。  夜のプールはやっぱり暗くて、月の灯りと、時々外を走る車のライトと、街灯だけが頼り。  俺は透さんの後を、離れないように従いて行く。  薄暗いけど、少しずつ目が慣れてきた。  入ってすぐの所には、更衣室とかのある建物があって、その横にシャワースペース。  広めのプールサイドの一角の、休憩スペースのベンチの所で透さんは立ち止まって俺を振り返った。 「どう? プライベートプールは」 「プ、プライベートって!」  —— だけど、やっぱりマズイんじゃないだろうか。  もし見つかったら、それこそスキャンダルになるって!  ここんとこ、よく耳にした、スキャンダルって言葉で、俺の頭はいっぱいだった。 「直くんも、早く脱いで」 「とっ、透さん!」  そんな俺に、お構いなく、透さんはネクタイを解き、シャツのボタンを外していて……。 「あああ、何、脱いでんの?!」  慌てて止めようとすると、「だって、泳ぐ為に来たんでしょ?」と、言いながら、俺のシャツのボタンを外し始める。  ボタンを一つずつ外す、透さんの綺麗な指を眺めながら、俺は一瞬納得しかけた。  —— ああ、そうか、泳ぐんだもんな………、  …… って! ちがーーーうっ! 「ま、待って、待って! 透さん、だって水着は? 水着ないよ?」 「誰も見てないんだし、いらないんじゃないかな」  にっこり笑って、俺のシャツを脱がし終えると、自分のシャツも脱いで、ベンチの上に放り投げた。  俺に背中を向けたまま、透さんはスラックスと下着を一緒に脱いでいく。 「と、透さん……」  確かに誰も見てないよ。 …… 見てないけど!  けど……、  月の灯りの下で見る、全てを脱いだ透さんの引き締まった後ろ姿が、あまりにもキレイで。 俺は息を飲んで固まってしまう。  肩越しに振り返って、俺を見つめる漆黒の瞳が、艶っぽく光って見えて……、その瞳に誘われるように、気が付けば、俺も残りの着ている服を、全て脱ぎ捨てていた。

ともだちにシェアしよう!