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—— Moonlight scandal(38)
透さんは軽やかな動作で、プールサイドから水の中へと飛び込んでいく。
全身の筋肉が瞬時に躍動するのが、スローモーションのように見えた気がした。
完璧な入水角度で上がる水しぶきは、月の灯りに青白くキラキラと揺らめいて、静かな音を響かせた。
でも、水音が響いたのは一瞬で、水面に波紋を残して、辺りはまた、しんと静まり返る。
水中を 軽くドルフィンキックで進んでいた影が、プールの真ん中辺りで、ゆっくりと浮上してきて、纏わり付いた水と一緒に、透さんが水面に顔を出した。
濡れた髪を揺らせて、滴り落ちる雫を飛ばし、両手で前髪を掻き上げる動作が、映画のワンシーンのようだと思った。
「直くん、泳がないの?」
ゆっくりと泳いで、こちらへ戻ってきた透さんが、プールの中から俺を見上げて首を傾げてるけど……。
「え、う……ん。 泳ぐけど…… なんか……、」
水着も何も着けてないから、なんだか心許なくて恥ずかしい。
「水の中に入らないと、余計に恥ずかしいよ?」
透さんはそう言って、俺に手を差し出した。
確かにそうだった。 プールサイドで真っ裸でしゃがんでる俺は、かなり恥ずかしい格好だ。
意を決して、プールの縁に座って足を水の中に入れてみる。
「ケツ、冷てぇ……」
水の中の足よりも、座った部分に感じる水が、思いの外、冷たい。
「入っちゃえば、そうでもないよ」
クスクスと笑いながら、俺の手を握った透さんに、クイっと引っ張られて、水の中へパシャンと引きずりこまれた。
「うっわっ、冷たっ! しかも深っ!」
プールの水はやっぱり冷たくて、水深は思ったよりも深くて、俺の身長だと背伸びして、やっと顔が出るくらいで、思わず、大きな声を出してしまった俺に、透さんは「シーっ」 と、口元に人差し指をあてる。
「寒い?」
そう訊きながら、水の中でやんわりと抱きしめてくるから、水の温度とは逆に、体内の温度は上がってしまいそう。
「だ…… いじょうぶ……」
透さんの言う通り、入った瞬間は冷たかったけど、慣れたらそうでもなくて、それより……。
透さんに軽く抱えられてる身体は、水中だから浮遊力があって、なんだか…… 俺のと、透さんのモノが、軽く触れ合ってて……。 しかも何か…… 俺のだけ、硬くなり始めてる気がする。
「直くん」
名前を耳元で囁かれて、腰に回された腕に引き寄せられて、身体がいっそう密着すると、体内の熱が一気に上がりそうになってしまう。
—— やばい……、このままじゃ俺…… !
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