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 —— Moonlight scandal(39)

「お、俺も泳ごうっかなー!」  誤魔化すように、そう言って透さんの腕の中から抜け出して泳ぎだした。  …… 泳ぐと言っても、俺はそんなに水泳は得意な訳じゃない。  キレイなクロールで水を切り、まるで滑るように泳いでいく透さんに、呆気なく追い抜かされるのを、必死な自分流なフォームで泳ぎながらも、水しぶきの隙間から眺めていた。  段々、距離が開いていって、透さんの姿が視界から消えてしまう。 50mは、最近運動していない俺には、キツいみたいだなー、なんて考えていたら……。 「っつ! 」  —— うそーっ! 足つった?!  両方のふくらはぎの筋肉が、プルプルしたと思った瞬間、ピキーンと音でも出たんじゃないかと言うくらいの激痛が走った。  プールは深くて、つってしまった足では、立つ事も出来ない。  痛みを和らげようと、膝を伸ばして爪先を掴もうと手を伸ばせば、身体は沈んでいってしまう。  片手で水をかいてみたけど、全然浮かなくて、焦って息を吸ってしまって、水が鼻に入ってくる。  —— うそっ! これは溺れるっ! 『夜の学校のプールに不法侵入した大学生、溺死』  明日の朝刊の見出し、決まりだな。  …… なんて、冗談言ってる場合じゃなくて、俺は必死に腕を伸ばして、何とかコースロープに掴まった。 「—— ゲホッ、ゲホッ、」 「直くん?!」  プールの水を嫌と言う程飲んでしまって、咳き込んでいる俺に気付いた透さんが慌てた様子で引き返して来てくれた。 「どうしたの? 大丈夫? 」  透さんは、コースロープに掴まって咳き込んでいる俺の背中を摩りながら、心配そうに顔を覗き込んだ。 「—— あ、足がつっちゃって…… 」  そうしてる間も、ふくらはぎの痛みが半端なくて、涙目になってきていた。 「足? どこ? ふくらはぎ? 」 「…… う、ん、」  触られるのも痛い気がして、余計に力が入ってしまう。 「直くん、コースロープに掴まったまま、背泳ぎみたいな姿勢とれる? 」 「あ、うん、なんとか」  言われるまま、片手でコースロープを掴んで、背泳ぎの姿勢で水面に浮かんだ俺の足を、透さんがマッサージしてくれた。 「—— っ! 」  足裏を反らせるようにされると、痛くて我慢できなかった。 「痛い? よね」  痛みを気にしてくれながら、ふくらはぎをマッサージしてくれて、それからゆっくりと、プールサイドの方へ移動した。 「…… もう、大丈夫だよ」  プールの縁に座った状態で投げ出した俺の足を、透さんは念入りにマッサージを続けてくれていた。  もう、痛みもなくなって、硬くなった筋肉もほぐれてきてる。 「ごめんね。 急に泳いだし、やっぱり冷えちゃったかな」  そう言いながら、透さんは、ふくらはぎから太腿の方へ掌を滑らせる。 「透さん、俺、寒くないから。 もう足も痛くないし…… っ、」 「そう? 」と言いながら、透さんが濡れた手で内股を撫でてきて、身体がピクッと震えてしまう。 「やっぱり寒いの? 震えてるけど」  寒くて震えてる訳じゃないと、分かってるくせに、透さんは、わざと訊いてくる。  その間も内股を触る手は、段々と上へと這わされていく。 「…… ん、」  足の付け根まで伸びた手は、俺のモノに触れそうで触れない、微妙な位置までくると、また下へ下りていってしまい、それだけで俺は吐息を漏らしてしまう。

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