「なっ？！　拗ねてなんかないってば！」 　思わずムキになって否定してしまった。　けど、透さんは楽しそうに「はいはい」と、笑いながら、また泡の付いた手を背中に滑らせた。 「そうやっ、て……、いつも、俺のこと、子供扱いするんだか……　ひゃぁっ！」 　手のひらと肌の間に泡を挟むように、優しすぎる力加減で、弱い脇腹から腋の下へと滑っていくから、くすぐったくて、つい高い声をあげてしまう。 「くすぐった……　ぁっ」 　身を捩って訴えた声も、自分でも驚く程に甘い声で、顔が熱くなる。 　——　これって、もう洗ってるって言わないんじゃ……　？！ 　抗議したくても、今度は胸から首筋へと這い上がった手に顎を捕らえられて、肩越しに唇が重なる。 　口唇の熱を感じてしまえば、俺は無意識に目を閉じる。　だけど透さんは、上唇を一度だけ食んで離れていってしまう。 　薄目を開けると、湯気で曇った鏡に、薄っすらと二人の影が映っていた。 「直くん……」と、耳元で名前を囁いて、透さんは、肩から腕へと手の平を滑らせながら、「分かってるよ」と、言葉を続けた。 「……　何、を？」 　訊き返せば、優しく微笑んでいる透さんと、鏡の中で視線が絡んだ。 「直くんの、言いたいこと」 「…… 　え？」 　腕を撫でていた透さんの手は、俺の左手を取って、指を一本一本丁寧に洗っていく。 「子供扱いしてるつもりは、ないけどね？」 　話している間も、泡を足した透さんの指が、俺の指の間に滑り込んで柔らかく行き来する。 「でもね、急いで大人になろうとする必要ないよ」 　全部の指の間を洗った後、恋人繋ぎのように指を絡めて、親指で掌をゆっくりと撫でられて、小さな快感が身体の奥に生まれる。 「……　ふ、っ……」 　我慢していた声が小さく漏れてしまう。 「気持ちいい？」 　耳元に甘い声で訊かれて、素直に頷く俺……。　って、そうじゃなくって！ 　何も考えられなくなりそうな思考を、なんとか呼び戻す。 「……　っ、でもっ、俺、いっつも透さんに甘えてばっかで……　もっと……」 　考えがまとまらなくて、そこで言葉が詰まってしまう。 「今は、甘えてくれたら良いんだけどな。　俺はそれが嬉しいんだから」 　俺の手のひらを弄っていた透さんの指が、今度は、腹から胸の方にゆっくりと上がってきて、ぞくぞくと全身が粟立ち、息遣いが乱れてしまう。 　泡の付いた指先で、二つの突起を弄ぶように転がされた。 「あ、っ……」 　ボディソープでぬるぬるとした感触が、硬く尖った乳首を何度も滑り、そこから快感が広がって身体が熱く火照っていく。 　頭の芯がぼうっと痺れて、もう本当に何も考えられなくなってしまいそう。 「直くん……」 　耳朶を食んで、甘い声で名前を囁かれると、耳から全身へとその声が響き渡るようだった。