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—— Moonlight scandal(49)
後ろから抱き締められて、耳元に唇を寄せたまま、透さんは囁くように話を続ける。
「俺は、直くんが居てくれれば、何でも出来る気がするよ」
シャワーを止めて時間が経った浴室の、目の前の鏡の曇りは、少しずつにクリアになってきていて、鏡の中の透さんの瞳にじっと見つめられていた。
「俺も……。 俺だって、透さんが居てくれれば何だって出来ると思ってる……。 でも、実際は甘えることしかできなくて、透さんのために何も出来なくて……」
ぼんやりとした頭で必死に言葉を探す。 気持ちを伝えるのって、なんでこんなに難しいんだろう。
「そうやって一生懸命考えて、俺の事を想ってくれている気持ちだけで十分だよ。 理屈じゃなくて、傍に居てくれるだけで、お互いを想い合えるだけで、とても幸せだよ」
「…… 透さん……」
鏡の中で、優しい眼差しに見つめられて、俺も、その瞳に応えたいと、心から思う。
「俺は……」
—— ずっと透さんの傍に、いたい。 それが本心。
ただ、それだけでいいのかなって、考えてたけど……。
『相手を想う気持ち。それだけで、いいんじゃないのかな』
透さんのお父さんの言葉が、また蘇って、俺は漸く、何となくだけど、その意味が解った気がしていた。
「直くんは? それだけじゃ足りない?」
鏡の中の透さんと、視線が絡んだ。
「他に欲しいものある?」
—— 他に欲しいものなんて……。
「ない……、ないよ!」
俺は振り返って、透さんの首にしがみ付いて、その唇にキスをしながら、お父さんの言葉を思い出していた。
『二人共、この手が離れないように、今の気持ちを忘れてはいけないよ』
そう言ってくれた時のお父さんの笑顔は、透さんによく似ていたな。
何度か角度を変えて、深く口づけて、見つめ合う。
「その内、嫌でも大人になるんだから、その時は……」
そう言って、今度は唇を耳元に寄せて、透さんがあの甘い声で続きを囁く。
「その時は、俺が目一杯、直くんに甘えるから」
「へ…… ?」
—— 透さんが俺に甘えるぅ? …… 想像できないけど…… でも……。
「…… っ、」
頭ん中で、そんな事をごちゃごちゃと考えていると、胸をぬるぬると触る手の動きが再開されて、下っていくもう片方の手に、思わず息を呑んだ。
双珠を泡の付いた手にやわやわと撫でられて、腰の奥が熱く疼く。
そのまま指が、尻の割れ目を辿って、入り口へと到達する。
「ん、ッ、」
ぬるぬると入り口を円を描くように動く指に、次の刺激を期待してしまう。
「と、おるっさん……、」
—— ああ、もう、理性がぶっ飛びそう。
「今は……、」と、優しい声が、鼓膜を擽ると、身体の力が抜けていく。
同時に透さんの指を、難なく中へと受け入れた。
「…… いくらでも俺に甘えてよ」
「 っあ……」
ぬめりを纏った長い指に、内壁を甘く擦られて、思わず出した嬌声が浴室に響いた。
「…… 直くん? もっと甘えて」
「は、ぁッ、透、さんっ……」
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