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 ―― 幸せのいろどり(7)

 一緒に夕食を食べて、ゆっくり向かい合って話をしてみれば、やはり最初の印象どおり、素直で明るくて可愛くて、彼がそこにいるだけで、いつもの自分の家なのに、どこか華やかで。  自分の生い立ちや、過去の出来事に捕らわれて荒んでしまった心に、透明な風を吹き込んでくれるようだった。  生クリームが口元に付いているのにも気付かずに、ケーキを美味しそうに頬張ってる顔が可愛くて。  つい、口元に付いているクリームを指で拭って、そのままその指を舐めたのも、意味はなかった。  その後、慌てた直くんが、顔中に盛大に生クリームを付けてしまったのが可笑しくて、ふざけて顔に付いているクリームを舐め取ったのも、ほんの悪戯心だった。  直くんの反応が、あまりにも可愛くて……。  だからこそ、俺は不意に見たくなってしまった。  年上の女の子二人と、ホテルに行くような直くんが……。  ―― どんなキスをするんだろう。 どんなセックスをするんだろう。 そして、イク時はどんな顔をするんだろう…… と。  抑えきれない衝動に駆られて、手を伸ばして、「俺と一緒に居るの嫌?」と、ずるい質問を投げかける。 「…… 嫌じゃな…… ッ」  言いかけた直くんの唇に触れるだけのキスをした。  直くんは、驚いた表情をしているけれど、嫌がってはいない。 でも……。 「…… なんで……、」  疑問を口に出される前に、その唇を塞いで甘い咥内へ舌を挿し入れた。  逃げを打つ細い腰を抱き寄せて、ためらう直くんの舌を柔らかく絡め捕る。  最初は戸惑い強張っていた身体の力が少し抜け、俺のキスに応えるように重ねた唇の隙間から甘い吐息を零す。  一度触れてしまうと、もうその先へと、俺の欲望は走り出していた。  シャツの釦を外して、滑らかな肌に唇を寄せて、首筋から胸へと啄むようにキスを落としていけば、胸の突起に辿り着く。  そこは少し触れただけで、ピンと尖り、ほんのり色付いていく。  まるで誘われているような錯覚に陥って、舌を這わせようとすれば、直くんが微かに身を捩る。 「…… やッ…… やめ…… ッ」  弱々しく拒もうとする両手を掴み、ソファーへと縫い止めて、小さく抵抗の言葉を漏らす唇を塞ぐ。 「…… っ…… ふ…… ん、ん……っ」  もう何も考えさせないように、もっと深く口づけていく。  弱く抵抗していた手の力が弛むのを感じて、閉じた膝を割り脚の間に身体をぴたりと密着させると、直くんは焦ったような声をあげた。 「あっ! あのっ!」  戸惑って揺れる瞳。 「男の俺にこんな事されるの、嫌だよね……」  俺はずるい。  彼は拒めないと、分かっていた。

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