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 —— 幸せのいろどり(29)

 チュッと重ねるだけのキスをして、その唇をぺろりと舐めてから、鼻先が触れるほどの位置で直くんを見れば、両手で包んだ頬が真っ赤染まってる。 「どうしたの? 顔が真っ赤だけど」 「あ、あの……、いや、なんでもないです」  俺の手の中から顔離そうと直くんは、耳まで赤くなっている。  身体を捩って、何故か距離を取ろうとする直くんの腰に腕を回して引き寄せた。 「直くん?」  此方を見ない直くんの顎を捕らえて、振り向かせ、もう一度唇に口付けると、ぴくりと身体を震わせた。 「あ、あのっ…… !」  焦る直くんの耳に息を吹きかけるようにして。心当たりを囁いてみる。 「…… 思い出しちゃった? イブの日のこと」  俺が視線を下へ落とすと、直くんもつられて下を見て小さく声を漏らした。 「…… っ…… 」  直くんのパジャマのズボンの柔らかい生地は盛り上がり、先端に染みを作っている。 「これは…… あの、えと、ごめんなさい……」 「なんで謝るの?」  クスッと笑いながら、ズボンの上から盛り上がった先端を指で撫でると……、なんとなく違和感を感じた。 「あれ? …… 直くん」  ズボンの中へ手を入れて、気が付いた。 「直くん、下着穿いてないの?」 「…… え、だって昨夜シャワーの後、透さんにパジャマを貸してもらって……。 でも下着が無かったから…… そのまま……」  二人でシャワーした後に、直くんにパジャマを貸してあげたけど、下着を渡すのを忘れていたらしくて。 それで直くんは、言い出しにくくて、そのままズボンだけ穿いたらしい。 「あっ、ああ……、そうか、そうだったね。 ごめんね?」 言ってくれたら良かったのに…… と、言いながら布の下の屹立に指を絡めると、直くんの唇から吐息が零れる。 「…… んっ……」  そのまま唇を塞いでソファーへ押し倒し、先端に滲んだ先走りを指で広げながら上下に扱いた。 「…… と、おるさ…… っ」  重ねた唇の隙間から、直くんが吐息交じりに俺の名を呼ぶ。 「何?」 「—— かいもの、は?」  ああ…そうだったね。 買い物に行くと言ってたけれど。 「…… いいよ、買い物は。 冷蔵庫にあるもので何か作るから」  そう言って、また直くんの唇を塞ぐ。 「…… っ…… ん、…… ぁ、あのっ」 直くんがまた、何か言いたそうに、唇を僅かに離す。 「…… どうしたの?」 「…… 今度、俺の下着とか着替え、持ってきて、透さんちに置いておいてもいい?」  それは、また此処に泊まりに来たいということだよ、直くん。  直くんは、無意識なのかもしれないけれど、そんな事を言われる度に、俺は嬉しくて、どんどん手放したくなくなってしまう。  —— この心地よい温もりを。  このまま、曖昧なこの関係を続けていたいと思ってしまう。 —— 直くんが、俺に飽きるまででいいから。 「勿論。 いいよ、今度持っておいで」  そう言って、また直くんの唇を塞いで、今度こそ深く口付ける。 「…… ん、」  お互いの舌が縺れ合い、唾液が混じり合う音は、テレビの音に掻き消されるけれど。  求め合う熱い吐息が乱れ始めるのを、肌で感じていた。

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