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 —— 幸せのいろどり(46)

「形を…… 変える?」  言われた言葉をそのまま声に出して繰り返すと、静香が少し大人びた表情をしてクスっと笑う。 「…… そう……、形を変えるの。 でも、お兄ちゃんの思ってるのとは、少し意味が違うと思うけど」  暖房が効いてきて、曇り始めた窓ガラスを指で軽くなぞりながら、静香は言葉を続けた。 「俊之とは、5年近く付き合って結婚したけど、今も最初の頃と同じってわけじゃないでしょう?」  それは…… そうだろう。 付き合い始めた時と、全く同じ気持ちのままじゃないとは思う。 「付き合ってる間にも、色んなことがあって、その時々でケンカもするし、支えあったりもする。 最初の頃のようなときめきは無くなっていくけど、その代わりに信頼と思いやりは育っていくような気がするの」  静香は、少し照れくさそうに、自分の頬を両手で包んだ。 「…… って、恥ずかしいな。 こんな事お兄ちゃんに言うのは。 お兄ちゃんだってそんなの解ってるよね。」 「…… いや、静香とこんな話、した事なかったね。 続き、訊かせてよ」 「…… 例えば、1年目と2年目では二人の関係は、少し変わってくる。 最初は、『好き』ってだけの気持ちだったのに、『嫌い』なところも見えてくるでしょう? それが3年目、4年目になってくると、もっと変わる……」  左手の薬指のシルバーのリングを右手で撫でながら、俊之くんと出逢ってから、これまでの日々を思い出しているのか、懐かしそうに目を細めながら話す。 「…… 上手く言えないけど、一番解りやすく変わるのは、結婚してから…… かな」  そこで言葉を区切り、静香は俺の方へと視線を向けた。 「でも積み重ねた時間とともに愛は形を変えて、信頼も思いやる気持ちも成長させる。 要は……、この人とずっと一緒にいたいって気持ちかな。 根本に好きって気持ちがないと、ずっと一緒には暮らせないよ」  —— ずっと一緒にいたい気持ち……。 「お兄ちゃんは、そんな人いないの? それとも、美絵さんとずっと一緒にいたいって思う?」

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