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―― 聖夜と生クリーム味の……(13)
「生クリーム、ついてた」
そう言って、俺の口の横についた生クリームを指で拭って……、その指を、舌でペロッと舐めた。
その仕草がなんか色っぽくて、めちゃくちゃドキドキしてしまう。
「あ、ごめん。つい……」
固まってしまった俺を見て、透さんも少し慌てた様に、照れて笑っている。
「直くんが、生クリームついてるのも気が付かずに美味しそうに食べてるから、可愛くって…… ついね」
「うぁあ、すみません。俺ってガキですよね……」
なんか恥ずかしくて俯いてしまう。 顔が熱い。 きっと真っ赤だろうなと思うと、恥ずかしくて、顔を上げることができない。
恥ずかしさを誤魔化す為に、俺はケーキをおもいっきり頬張った。
「ぐふっ……」
一口で食べれる大きさを遥かに超えた分量を、無理やり口に押し込んだものだから、唇にも、その周りの顎や鼻の上にまで、生クリームがべっとり付いてしまった。
慌てて食卓のテーブルの上に置いてあるティッシュペーパーを、取りに行こうとすると、不意に透さんに、右腕を掴まれて引っ張られた。
「え?」
ソファーの上に戻された弾みで、僅かに身体が跳ねる。
―― なっ……?
驚いて顔を上げると、透さんの顔が近付いてくる。
「可愛いな…… ホントに……」
―― え?…… え……?
透さんの舌が俺の唇に触れてきて、ペロッと生クリームを舐め取った。
―― うそーーーー?!
今起こってる事が理解できなくて、固まったままの俺の顔に付いてる生クリームを 透さんは更に舌で舐め取っていく。
視界一杯にひろがる、彼の顔は妖しく艶めいた色気を放っていて……。
ドックンドックン…
心臓が有り得ない大きな音で動いてるのを感じる。 透さんの耳にも届いてるんじゃないかってくらい……。
最後に鼻の上を触れるように舐めて、透さんの顔が離れた。
俺は口の中いっぱいに頬張ったままのケーキを飲み込む事も出来ず、ただ、ただ、固まって、自分の顔が熱くなって耳まで真っ赤になっていくのを感じていた。
「ごちそうさま」
真っ赤になってる俺に、こんな事何でもない事のように悪戯っぽい笑顔で、透さんはそう言った。
―― か……、からかわれたのか? 冗談にしてはやり過ぎだよぉ!
「透さん、ふざけ過ぎ……」
口の中のケーキをモグモグと食べながら訴えたけど、先ほどの行為の余韻で力が入らず、小さくて掠れた、情けない声しか出なかった。
「ごめんごめん、でも美味しかった。 甘くて」
「……」
な…… なんて反応したらいいんだ?
こんな事、普通男にするだろうか? 透さん、何考えてるんだ……。
これがもし、他の男にされたとしたら、どうする? 例えば…… 幼馴染の啓太とかだったら……。
「……」
ぜってー やだ! 気持ち悪い~~って、断固拒否するだろうな。 やめろ!って言ってボコボコにするな、きっと。
でも、何故だか透さんだと、嫌だとか気持ち悪いとか思わなかったりして……。
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