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第二章:迷う心とタバコ味の……(1)
昨夜の寒さが嘘みたいに、今日はポカポカと良い天気だなーなんて、
炬燵に足を突っ込んで窓の外の空を眺めていたら、昨日のアレは夢だったんじゃないかって気がしてくる。
「…… いててっ……」
だけど体の中に、何となく残る違和感が、俺を現実に引き戻そうとする。
「…… で?」
追い撃ちをかけるように、少し苛立った声。
「んーーー?」
「おまえさぁ、何しに来たわけ?」
幼馴染の啓太が、ゲームをしながら、怠そうに俺を横目で見る。
「…… だから、クリスマスケーキを一緒に食べようと思って……」
俺は、コンビニで買ってきた、カップに入ったプリンアラモードのプリンを、スプーンで突いて揺らして見せた。
コンビニデザートは、意外と高いんだぞ、奮発したのに……、何の文句があるのかな、啓太は。
「あのなぁ……」
啓太がゲーム機を置いて、まだ開けていないプリンアラモードを手に取って、
「これのどこが、クリスマスケーキなわけ?」と、生意気な事を訊いてくる。
「…… だから、さっき言ったじゃん、クリスマスケーキを啓太と一緒に食べようと、昨夜持ってきてやろうと思ったんだけど、途中で食べちゃって、仕方ないから、コンビニでこれを買ってきてやったんだって」
「はぁー?おまえ、それ意味不明なんだけど?」
もう、いいけどよ、どうでも…… とか言いながら、溜息なんかついてる啓太。生意気だな、オイっ。
「で、その本物の、クリスマスケーキとやらは、どこの女と食べたわけ?」
「……」
痛いところを突かれて、思わずギクリとして、言葉に詰まってしまった。
鋭いな…… 啓太。
―― 『女』、じゃないけどな…。
そう、昨夜俺は確かに……、初めて男に抱かれたんだ。
応えを待つ啓太を余所に、俺は数時間前の事を思い起こしていた。
明るい陽射しをカーテン越しに感じて、目が覚めた。
見慣れない天井が見えて、ゆっくりと部屋の中を見渡した。
『…… ここは……』
寝ぼけた頭で昨夜の事を思い出して……、そうだ……、昨夜は透さんの家に来て、俺……。
『透さん?!』
慌てて飛び起きた、次の瞬間、
『--ってぇ!』
腰に痛みを感じて、息を詰め、俺はベッドの上で蹲ってしまった。
『ああ……、身体が怠い……』
なんか、後ろも痛い……。
―― 透さんは……?
透さんが寝ていたはずの場所を触ってみたけど、シーツは冷たくて、時計を見ると昼の12時を過ぎていた。
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