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 ―― 迷う心とタバコ味の……(2)

 昨夜、達した後の記憶がない……。  俺はあの時、ベタベタでドロドロだったはずなんだけど……。  身体はさっぱりしているし、髪の毛からはシャンプーの香りがする。  まさかとは思うけど……、  俺が落ちた後で、透さんが身体やら髪やら、洗ってくれたんだろうか…。  布団を捲ると、俺は薄い水色のシルクのパジャマを着ている。  透さんのを貸してくれたんだよな……。 それしか考えられないし。  ―― つか…、めちゃ長くてブカブカ…。  ふーっと、長く息を吐き出して、カーテン越しに光が差し込む窓へと、目を向けた。  意識を手放す前に、バルコニーに面した掃きだし窓にかかったカーテンの隙間から、雪がチラチラと降ってるのを見たのが最後の記憶だったような気がする。 『ホワイトクリスマスだったんだ……』  そんな事を思いながら、そろそろとベッドから降りて、重い腰をかばいながら、リビングへ向かう。  ドアを開けて、リビングダイニング、キッチンを見渡したけれど、透さんの姿は無かった。  ダイニングテーブルの上に、サンドイッチが置いてあるのに気が付いて近づくと、側にメモと、家の鍵が置いてあった。 「おはよう。今日仕事なので出かけます。 サンドイッチ作ったので、良かったら食べてね。飲み物は、適当になんでも飲んでいいから。 鍵は、ドア横のポストに入れておいてください」  最後に、携帯の電話番号が書かれていた。  ―― なんだ…、居ないのか……。  ちょっと残念で、寂しい。  冷蔵庫を開けて、牛乳を取り出してグラスに注いで一気に飲んだ。  喉がカラカラだった。  もう一杯グラスに注いで、ダイニングテーブルに置いてから、どさっと音を立てて椅子に腰かけた。  身体のあちこちで、キシキシと音が鳴ってるみたいに感じる。  サンドイッチをひとつ摘まんで、口へと運ぶ。  卵とベーコンとレタスを挟んだベーコンエッグサンド。ベーコンはカリカリで、卵はいい感じに半熟で、口の中で蕩けた。  粒マスタードが利いていて、すげえ俺の好きな味! 『美味しい……』  思わず、声に出してしまった言葉が、誰もいない部屋に響いて、ちょっと虚しい気持ちになってしまった。  サンドイッチをつまみながら、昨夜の事を思い出す。  透さんの腕の中で、喘ぎまくって、乱れまくった自分……。  その姿を脳裏に描くと、生々しくて、恥ずかしくて、額をテーブルの上に、コツンと軽く打ち付けた。