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 ―― 迷う心とタバコ味の……(4)

 ―― もう、透さんと二人きりで会うことは、二度とないんだ……。  大体、何であんなことになったのかな……。 「生クリーム……」  手に持った、プリンアラモードを、まじまじと見つめてみる。 「あ?生クリームが、どうしたって?」  コンビニでもらったスプーンの袋を開けながら、啓太が怪訝そうな顔をする。  俺は、プリンを囲むように飾られている、生クリームを指で掬って、自分の口の周りや、鼻のてっぺんに、塗りつけてみた。 「なっ?何やってんの、お前 ?!」 「なぁ、啓太」 「なんだよっ」 「お前さ、俺の顔に付いてる生クリーム、舐め取れる?」  俺がそう言うと、啓太は驚いて目を見開いてる。 「なぁ、どぉ?」  俺が目を閉じて、顔を啓太に近づけると、啓太は慌てて後退りする。 「…… ちょっ……、それ、何のプレイなわけ?」  うん、かなりの羞恥プレイだと思う。 「できない、よな?」 「あ…… 当たり前だっ」  ―― そうだよなぁ……、普通はしないよな。  そう思いながら、テイッシュで顔の生クリームを拭き取った。  ―― なんか、ベタベタする……。 「お前なー、食べ物粗末にすると、罰当たんぞ」  啓太が、呆れ顔で言う。 「んーーーー」  でも、昨夜の透さんは、生クリームで何かのスイッチが、入ったような気がするんだよな。 「お前、何かあったの?」 「いや、別に……」  言えないじゃん、昨夜男と寝たとか……。  そう思うと、昨夜の情事が頭を過ぎって、顔が熱くなった。 「あのさー、お前、ゆり先輩と何かあったろ?」  啓太は、プリンアラモードを食べながら、ちろりと横目で俺を見る。 「ゆり先輩?」  誰の事か、ピンとこないけど、話が変わったことに、俺はちょっとホッとした。 「いつだったか、学食で声かけられて、二人でどっか行ったじゃん」 「あ……、サークルの先輩?」  そうそうと、啓太が頷く。  ―― 空き教室で、一回だけヤッたよな。 結構可愛かった。 「昨夜も、ゆり先輩と?」 「はっ?んなわけ、無いじゃんっ」  ゆり先輩とは、あれきりだ。今の今まで忘れていたし。 「ホントに?」  何やら、真剣な眼差しで訊いてくる啓太を、不思議に思いながら、 「ホントだよ、なんで? ゆり先輩とは、あれきり会ってないけど?」  そう答えると、啓太は、少し安心したように、「なら、いいけど……」と、ボソッと言って、またプリンを食べ始めた。  なんとなく、啓太の態度に違和感がある。 「なんだよ? ゆり先輩がどうかした?」  俺がそう訊くと、啓太は少し気まずそうな顔をする。 「ゆり先輩さ、モテるから、その……、お前と付き合ってるみたいな噂が流れててさ。 ゆり先輩のことを好きな連中に、目ぇ、付けられてたらヤバイと思ってさ」 「はぁ?」  なんで、そんな事になるんだ?ゆり先輩は、後腐れなさそうに思ったし、付き合ってるなんて噂が流れるなんて、思ってもいなかったんだけど……。 「会ってないんなら、いいけどさ、ちょっと心配だったからさ、つかさ、あんまし遊び過ぎんなよ、恨み買ったら、馬鹿みたいじゃん」 「そうだな、気をつけるよ」  確かにな…… と、思った。  今まで俺は、いいかげんに考え過ぎていたかもしれない。  その場限りに関係を持って、俺はそれでよかったけど、相手がどう思ってるなんて、考えた事なかった。  ―― 透さんは、俺のこと、どう思ってるんだろう……。  やっぱり、ただの気まぐれだったのかな。俺も、それに流されたんだから、自分も気まぐれなんだと思うけど……。  何か、割り切れない気持ちが、胸の中でモヤモヤしてて、分からないんだ。  俺、バージンだったし…… なんてね……。  女の子のバージンも、何度か頂いちゃったよな……。  もっと考えてあげないといけなかった……、なんて、いつもなら、そんなこと、思ったりしないのにな……。