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―― 迷う心とタバコ味の……(5)
「ところでさぁ、お前、サークルの新年会出るだろ?」
「へ? 新年会? 何のサークルだよ?」
サークルは、適当に色々入っちゃったから、何に入ってるのかさえ、覚えていない。 新年会の連絡も、聞いてないけど?
はぁ~と、大袈裟な溜息を吐きながら、啓太がまた呆れ顔になった。
そのサークルとは、アウトドアなジャンルに入るらしいけど、やってる事と言えば、月1程度の飲み会とか、時にバーベキューとか、ドライブとか、やってるらしい。
最初の月の例会以外は、今まで一度も参加した事がない。 ゆり先輩も、そのサークルに入っているらしかった。
啓太がしつこく誘うので、俺も飲み会だし、参加する事にした。
「1月4日の19時だからな、忘れるなよ」
念を押す啓太に、「はいはい」と応えると、もう用が無いなら、自分の部屋に帰れなんて冷たく言われた。
「もうちょっと、休憩させて」
―― だって、腰が辛いんだもん…。
「休憩って…お前の部屋、この上じゃんか。ここでウダウダしてないで、疲れてんなら、帰って寝ろよ」
「えー、いいじゃんか、冷たいなぁ」
啓太と俺は、同じマンションの4階と5階。 学生専用の、ワンルームマンション。
エレベーターが無いんだ。
4階までは、手すりにしがみ付きながら、よたよた上って来たけど、力尽きてしまったわけで……。
と、言うのもあるけど、なんだか独りになりたくなくて、プリンアラモードを手土産に、啓太の部屋に寄ったと言うわけ。
「甘えんなよ」
そんな面倒くさそうに言わなくったっていいじゃんか……。俺、なんか寂しいんだよ。
「ところで正月、どうすんの?実家に帰る?なら一緒に帰ってやってもいいけど?」
―― やってもいいけどって、生意気だな、オイ、啓太の癖に。
幼馴染の啓太と俺の実家は、電車とバスで、せいぜい2時間もかからないくらいの場所にある。
郊外と言うと聞こえはいいけど、ま、不便な田舎にある。 大学も通えないわけじゃなかったんだけど……。
俺の母親は、俺が3歳の時に病気で亡くなって、ずっと6歳上のねーちゃんが、俺の母親代わりをしてくれていたんだけど、
親父が2年くらい前に、出来ちゃった婚で再婚。 しかも、その相手が……、俺と一回りしか変わらない。
だからって、仲が悪いわけではないし、母親とは思えないけど、友達みたいな関係。
で、今年の春に、姉ーちゃんが、めでたく結婚して家を出た。 そしたら、一歳になる小さい弟と、まだまだ新婚気分な親父達と、お邪魔虫な俺が残ったわけで。
俺は気をきかせたつもりで、大学入学を期に、一人暮らしをする事になった。それも、啓太と同じマンションならと言う条件だった。
「んー、大晦日から帰るかな」
「んじゃ、大晦日な」
と、なんとなく年末年始の予定が決まったところで、俺は啓太の部屋を追い出されてしまった。
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